2013年ドラフトで
巨人からドラフト2位指名を受け、プロの門をたたいた現
日本ハムの
大累進。道都大時代から脚力には絶対的な自信を持っており、犬と競争して勝ったこともあるという仰天エピソードでも話題をさらった。
そんな男に週刊ベースボールで好評連載中の「道具の流儀」の取材で、その爆発的なスピードを生み出すスパイクについて話を聞いた(インタビューは現在発売中の5月22日号に掲載)。足のスペシャリストらしく、重さ、形、刃、ソールに至るまで随所にこだわりが詰まっていて、ずっと話を聞いていたいと思える時間となった。
またこの日はスパイクの話だけでなく、私の中でどうしても聞きたかったことが冒頭の「犬にも勝った」という逸話のこと。どんなシチュエーションで競争し、どんな犬に勝ったのか、それはどれぐらいの差で勝ったのか、などなど……勝手に妄想をふくらませながら、その質問をぶつけるタイミングを探していた矢先、大累のほうからこんなひと言が返ってきた。
「このスパイクは素晴らしいんですけど、これを履いたからって犬に勝てるかって言ったら、勝てませんよ。だって、僕が勝った犬って……家で飼っていた小さな可愛いらしいコーギーですからね(笑)」
確かに勝ったことは勝ったのだが、それはヨチヨチと歩く小型犬のコーギー。それがいつの間にかコーギーという部分だけ抜け落ち、「犬と走って勝った」ということだけが大きく取り上げられてしまったという。
「どこかで言わなければと思っていたのですが、その機会を完全に逸してしまっていたんですよね(苦笑)。まあ、それでも名前を覚えてもらえるきっかけにはなりましたけど」
「大累進はコーギーより速かった」。これがあの逸話の「真相」である。
文=松井進作 写真=井田新輔