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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

中村悠平(ヤクルト)、捕手一筋の野球人生

 

時に失敗も重ねながら、捕手として成長を続ける真っただ中だ



 かつての野村克也、最近では古田敦也、そして谷繁元信。キャッチャーは経験がモノを言うポジション。名捕手は寿命が長い。名前を挙げた3選手はいずれも選手兼任監督を務めている。だが、他のポジションよりも過酷と言われるのが捕手。野球を始めたばかりの少年たちの目には、どんなポジションと映るのだろう。打席、守備のたびに防具を着脱しないといけないのは面倒だし、何より夏場は暑い。そのポジションの魅力を感じるまでは時間が掛かりそうな気も……。取材時、中村悠平捕手にそんな話をぶつけてみたが、やんわりと否定された。

「僕は野球を始めたときからキャッチャー。ほかのポジションはやったことないです。本当は最初、ピッチャーをやりたかったんですけど、指導者の方に『お前はキャッチャーをやれ』と言われて(苦笑)。それがきっかけでしたね」

 自ら望んで取り組んだポジションではなかった。だが、すぐにその魅力に気づいたという。

「僕は野球そのものが好きだったので。それに、キャッチャーは1球ごとにボールに関わることができるので楽しかったですよ。グラウンドの中で唯一、逆方向を向いているのがキャッチャー。それによって気づくこともあるし、仲間に指示を出すことも楽しかった」

 少年時代は、キャッチャーやっていてつらいとか、やめたいと思ったことは一度もなかったという。ただし、福井商高入学後は違った。

「甲子園を目指す中で、なかなかチーム状態が上がらず、自分自身で悩みましたし、監督からも怒られたりして……」

それでも厳しい練習に耐え抜き、正捕手として2年連続で夏の甲子園に出場。その強肩強打がプロの注目を集め、2009年ドラフト3巡目でヤクルトに指名され、あこがれの世界に飛び込んだ。

「指導者の厳しい言葉も、今思えば期待の裏返しだったんですよね。そんな時代を経験したから、今があると思えるんです」

 リードに正解はないと言われる。失敗を叱責されコーチや投手とぶつかったこともある。そんな苦難を乗り越えながら、捕手として成長を続ける中村。投手には自分の主張を押しつけるのではなく、対話しながら妥協点を見いだすことも覚えた。プロ9年目の26歳。捕手としての円熟期を迎えるのは、まだ先のことだろう。
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