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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

Koboパーク宮城に漂う幸福感

 

今季も観客動員数更新を続け、盛り上がるKoboパーク宮城のスタンド



 スタジアム全体に、何とも言えない幸福感が漂っていた。楽天が本拠地Koboパーク宮城で迎えた5月9日のロッテ戦。平日のデーゲームにかかわらず、スタンドは多くのファンで埋まっていた。そして三塁側スタンド上方には、スタジアムに隣接する仙台育英高生徒の一団が。地域貢献の一環で楽天が招待した、「課外授業」だという。同校チアリーダーがポンポンを手に、レフトスタンドの楽天応援に合わせて踊る姿は実に新鮮。プロ野球と高校野球のコラボレーションのようだった。

 また、ロッテにも高校生から一際大きな声援を浴びる選手がいた。2016年のドラフト1位内野手、平沢大河。地元・宮城、そして仙台育英高出身なのだ。この日は「九番・遊撃」として先発出場すると、4打数2安打でロッテ勝利に貢献した。ロッテファン、仙台育英生徒のみならず、楽天ファンからも大きな拍手が送られたのが印象的だった。

 かつて楽天を指揮した星野仙一は「東北のファンは優し過ぎる」と言った。もっと選手たちのマズいプレーには厳しい言葉を浴びせてほしい。そんな空気が選手を育てるのだと。しかし、創設13年目を迎えた今季も、スタンドに充満する温かい空気感は変わらない。楽天の打者が打てば大歓声が沸き起こり、投手がボールを先行させれば「あーっ!」と悲鳴が上がる。とにかく、選手を後押しする姿勢は終始一貫して変わらない。

 そんなときに思い出したのは、メットライフドームで起きた楽天・岸孝之へのブーイングだ。5月7日に、かつての本拠地で凱旋登板し、元チームメートである西武打線と対峙した。FAで自身の地元・仙台にある楽天へ移籍した岸へのブーイングはものすごい勢いだった。投球時はもちろん、けん制した際にも。

 試合は楽天が3対2で逃げ切り勝ち。岸がヒーローインタビューを受けていると、その間にもブーイングが止むことはなかった。その最後に、岸がライトスタンドの楽天ファンへ語りかける。「また、仙台でよろしくおねがいします」。

本人は言及しなかったが、これは西武ファンとの決別とも受け取れる。新たな本拠地に戻れば、自身の名が記されたライトブルーのタオルを掲げてくれる大勢のファンがいる。その後押しを受けながら、今後も投げ続けるのだろう。この2つの球場で目にした光景は、あまりにも対照的だった。
※文章を一部修正しました(5月13日)

文=富田 庸 写真=井田新輔
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