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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

劇的サヨナラに見たソフトバンクの攻撃力

 

5月10日のオリックス戦にサヨナラ勝ちしたソフトバンク。サヨナラまでの過程に打線の厚みを感じる



 ホームランは野球の花。剛速球で奪う三振からは投手の凄味を知る。劇的なサヨナラ打ともなれば、見る者、特にファンにとってはたまらない瞬間だろう。5月10日のオリックス戦(ヤフオクドーム)、ソフトバンクは延長10回、今宮健太の劇的一打でサヨナラ勝ちを飾った(3対2)。首位・楽天とは5月12日終了時点で2.5差。定位置浮上をうかがっている。

「ここで打たないと男じゃない」とオリックス・吉田一将の外角スライダーに食らいつき、中前に弾き返した二番・今宮。ただ、それが生まれたのは必然で、一番・明石健志、三番・柳田悠岐の存在がそれを呼んだと思っている。無死一、二塁から明石の堅実な犠打。柳田は同日時点で打率.234に沈むが、15年にトリプルスリーを達成した身体能力、その“足”の部分が生かされた。

 この回、先頭の八番・上林誠知が二塁打で出塁。オリックスベンチはその後の展開を描き、アウトを重ねていく上で確率が高い策が何であるか検討したはずだ。

 そこで導き出されたこの回を無失点で終えるためのシナリオが、無死一、二塁からの明石のバントをフォースプレーとなる三塁で封じ、今宮を三振か内野ゴロ、浅いフライで仕留め、柳田、内川のいずれかで勝負というもの。九番の甲斐拓也を敬遠したのは、ここで犠打で三塁に送られて、スクイズを警戒しながらの明石勝負を避けたかったからだし、明石を歩かせてもさらにバントのうまい今宮で同じ勝負をせざるを得なくなる。すべての塁を埋めても、足があり併殺の可能性が低い柳田との勝負は考えられない。

 明石のバントが決まった時点で勝負の流れはほぼソフトバンクに決していた。

 チャンスメークした上林の一打も見事だったが、2手先、3手先に相手の打つ手を消す分厚い打線にソフトバンクの近い将来の首位浮上が見えた。目に見える一打の裏にあるものを想像するのも野球の面白さだ。

文=菊池仁志 写真=湯浅芳昭
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