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ロッテ・荻野貴司を覚醒させた元盗塁王の言葉

 

荻野貴司は球界屈指のスピードスターの1人となった


「本格的に足を使わないといけない、と思ったのはプロに入ってからです。社会人(トヨタ自動車)のときも、速いほうではありましたけどバンバン盗塁をしていた感じではなかったので」

 千葉の韋駄天・荻野貴司の言葉だ。もちろん、小学生のときのかけっこはクラスで一番だった。しかし、「中学生になると周りがどんどん(足が)速くなってきて」。部活に集まる精鋭たちの中では、決してずば抜けた存在ではなくなっていく。「大学(関西学院大)ではまた少しずつ速いほうになっていったんですけど、特別に何かをやっていたというわけではないです」。

 ルーキーイヤーの2010年、開幕から46試合で25盗塁をマーク。失敗はわずかに3つで盗塁成功率は89.3パーセント、さらには打率も3割を優に超え、圧倒的なインパクトを残した。故障で残るシーズンを棒に振ってしまったが、新たなスピードスターの誕生は千葉のファンを沸き立たせた。ポテンシャルを秘めていたことに疑いはないが、社会人までは決して高くなかった走塁への意識が一気に目覚めたのはなぜか。

「当時は西村(徳文)監督で。盗塁王にもなられた方に、『どんどん行けよ!』って言ってもらえたんで」

 西村は1986年から4年連続盗塁王に輝き、首位打者も獲得した俊足巧打のスイッチヒッター。引退後はコーチ・監督としてもロッテを支え、荻野がプロに飛び込んだ10年にはリーグ3位からの“下克上”日本一を指揮したチームのレジェンドの1人だ。現在はオリックスでヘッドコーチを務めるが、そのプレースタイルは確かに荻野に重なるところが大きい。

 10年以降は常にケガの不安を抱えながらのプレーが続く荻野だが、走塁術は年々磨かれている。5月23日時点で129の盗塁を重ね、通算の成功率は.866を誇る。いまだ浮上の糸口が見えない今季のチームに呼応するように、ここまでは2盗塁に止まっているものの、進化を続ける荻野の“足”がロッテを活性化させることを期待したい。

文=杉浦多夢 写真=大泉謙也
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