開幕前に「打率4割を打って、今年限りで引退する」とも言っていたクロマティ。優勝のために打ちまくった
抜群のバットコントロールと、卓越した選球眼で44試合を経過した時点で打率4割をキープしているのが
近藤健介(
日本ハム)だ。5月26日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)でも1安打を放ち、打率.421。セ・リーグとの対戦となる、来週から始まる交流戦をどう乗り切るかがカギとなるかもしれないが、4割へ挑む姿で、しばらくは野球ファンを楽しませてくれるだろう。
4割をキープし続けた最長記録は1989年のクロマティ(
巨人)が記録した96試合だ。この年、来日6年目を迎えたクロマティは開幕の
ヤクルト戦で4打数3安打の好スタート。4試合目に4打数ノーヒットで一度3割台(.375)に数字を落としたが、翌日2安打を放ち、ちょうど4割に乗せると以後6月24日、57試合目まで4割をキープした。
一旦、3割台に落ちた打率は8月になってまた上昇。9日に4割復帰、8月20日、開幕から96試合目を終了した時点で.401をマークしていた。このときクロマティがクリアした打席数は404。当時130試合で行われていたペナントレースの規定打席数は403、つまりこの時点で仮にクロマティが残り試合を全部欠場したとしても4割打者の誕生ということになっていた。だが、優勝争いを繰り広げている中、そういうわけにもいかず、22日のヤクルト戦で4割を切ってからは再び“大台”への復帰はならなかった。
クロマティの最終打率は.378で首位打者を獲得し、20勝を挙げた
斎藤雅樹を抑えてMVPにも輝いた。「オレの役目は後ろにつなげることさ」と口グセのように言っていたが、クロマティがヒット狙いに徹底したことは本塁打数を見れば分かる。前年は故障で81試合に欠場したが、87年は28本打っていた本塁打が、89年はほぼ半減の15本。安打方向もレフト、センター、ライトとほぼ均等の割合で放つ広角打法を見せていた。
また、意外なストレス解消法もあったという。2年前に
宮下昌己の死球に怒って右ストレートをお見舞いしたが、そのときのシーンを録画したビデオテープをテレビ局の知り合いに頼んでもらっていた。「あれは、記念になるプレーだからね」とニヤリと笑ったクロマティ。ストレスがたまってくると、酒を飲みながら“KOシーン”を観賞していたのだという。
写真=BBM