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巨人監督事件史その6

ミスタープロ野球、巨人・長嶋茂雄監督解任!

 

会見では笑顔も多かったが、目は涙で潤んでいた


 1980年10月21日、日本中に衝撃が走った。17時のニュースで流れた「長嶋茂雄巨人監督退任」の一報。ウワサはあったが、誰もが半信半疑だった。

 現役時代から国民的スーパースター、監督としては1年目の最下位から優勝のドラマを生んだ。いつも最後の最後に人々に笑顔を運ぶ男だった。しかし、今回だけは違った……。76、77年はリーグ連覇も79年は5位低迷。盟主巨人で3年連続V逸は許されない。80年は優勝奪回が絶対条件だった。

 ただ、長嶋監督は“勝ち方”にこだわった。補強ではなく、自らが鍛え上げてきた若手たちで頂点に立ちたいと思った。そのくらいの素材とも信じていたのだろう。そして79年、“地獄”の伊東秋季キャンプで中畑清篠塚利夫江川卓西本聖松本匡史らを鍛え上げ、彼らに“磨き”をかけた。

 しかし、シーズンに入ってからは、なかなか勝てない。夏場には5位が定位置になった時期もある。OBの長嶋批判も活発になり、週刊誌の座談会で川上哲治前監督が「次は藤田元司がいい」と言って物議を醸し、マスコミの長嶋批判も激化した。

 後半戦、長嶋は腹を括ったかのように若手に一気に切り替え、3位に。独走の首位・広島には14ゲーム差をつけられたが、長嶋監督も手ごたえをつかんだはずだ。来季への抱負を語る言葉も多かった。

 しかし、すべてが変わった。21日の会見、長嶋退任、藤田新監督就任が発表され、長嶋は「解任」ではなく、自らが選んだ「辞任」であると強調。笑顔も多かった。

「男としてケジメをつけたいと思いました」

 すべてをのみ込んだかのような笑顔と涙で潤んだ目で語ったとき、全国の野球ファンがもらい泣きをした。

写真=BBM
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