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巨人・山口俊、泣き虫右腕の恩返し

 

6月14日の東京ドームでのソフトバンク戦で移籍後初登板を果たした山口俊。6回を無失点の好投でG初勝利を手にし、ヒーローインタビューで涙を見せた


 ジャイアンツファンは山口俊の涙を、どのような感情で見ていたのだろうか。

 6月14日、東京ドームでのソフトバンク戦に、昨オフにFAでDeNAから巨人入りした山口俊が移籍後初登板初先発。結果は、6回まで無安打無失点8奪三振のほぼ完ぺきなピッチングで、巨人初勝利を手にしている(しかも、7、8回のS.マシソン、9回のA.カミネロも鷹打線を無安打に封じるプロ野球史上4度目のノーヒットリレーのおまけつき)。

 1回表の投球練習から、気持ちが入っていた。空回りをしないタイプのようで、捕手の小林誠司のミットをたたくストレートには威力があり、本当に右肩に違和感を抱えていたのかと疑問に思うくらいに、よく右腕も振れる。6回無安打8奪三振は、この日のデキから考えれば当然の結果で、「やっぱりいい投手だと思った」と賛辞を送った高橋由伸監督も、待望の戦力の合流を喜んでいる。

 そしてヒーローインタビューである。お立ち台に呼ばれた山口俊は、ハイテンションで東京ドームのファンに自己紹介をした直後、表情を急変させる。昨秋からの右肩違和感のため春季キャンプは三軍で過ごし、その後も一進一退(痛みはないのに恐怖心で右腕が触れなくなる)を繰り返すこの4カ月間が脳裏に過ったのだろう。「すごく長かったです。勝ててホッとしています」と、昨秋のFA宣言会見に続き、人目をはばからず涙を流している。

 しかし、本当に泣きたかったのは、13連敗を喫するなど、リーグ下位に低迷する責任を取る形でGMの職を自ら辞した堤辰佳前GMだったかもしれない。奇しくも鹿取義隆GMへの交代が発表されたのは、山口俊初勝利の前日で、本来ならば開幕から先発ローテを担うべきであったFA組の1人に対し、「泣いている場合か」と感じたファンも少なくなかったはずだ。

 本人もその責任を感じており、FA宣言直後に真っ先に手を挙げて移籍交渉に当たった堤GMへの恩返しを明言する。残すは約80試合。この日のパフォーマンスを維持できるのであれば、ギリギリ10勝に届く計算だが、どうだろうか。

文=坂本 匠 写真=川口洋邦
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