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石田雄太の閃球眼

セ・リーグにもDH制を

 

パ・リーグ首位の楽天では、アマダーがDHに座る


 交流戦が終わった。

 今年もパ・リーグがセ・リーグを圧倒して終わったというイメージで括られてしまいそうだが、そうばかりでもない。スワローズの10連敗、ジャイアンツの9連敗がセとパの星の差を広げてしまったことは大きく、セはカープが6連勝を記録する一方、パでもファイターズが6連敗を喫するなど、セの球団がすべて弱かったわけではなく、パの球団がすべて強かったわけでもない。歴史的に見ても、過去の交流戦ではホークスがとりわけ強く、ベイスターズがとりわけ弱かったことがセとパの星の差に表れているという一面もある。

 とはいえ、セとパには球団によって温度差が存在していることは実感させられるところだ。パはマリーンズの改革を先頭に、ホークス、ファイターズ、イーグルスなどが続々と新機軸を打ち出し、それぞれの事情に合わせた投資額に見合う補強、育成などのベースボールオペレーションを効率的に行えるよう組織改革を断行したり、座席の工夫や球場の収益が球団にも入るよう、さまざまなビジネスモデルの再構築を行ってきた。パではライオンズ、バファローズが出遅れていたが、今やパ・リーグの各球団は時代に遅れまいとする意識の高さという点で、足並みがそろってきたと言っていい。

 その一方、セ・リーグの球団もずいぶん意識は変わってきたとは思うが、それでもカープ、ベイスターズに続く球団が出てきていない。その可能性はかろうじてタイガース、ジャイアンツには感じるものの、全体的にセの各球団からは依然、パのような熱を感じない。それが、交流戦の結果につながっていると言ったら飛躍し過ぎだろうか。

 交流戦(インター・リーグ)の歴史はMLBのほうが古いのだが、その結果はNPB以上に極端だ。NPBでは交流戦が始まって今年で13年目になるのだが、去年までの12年のうち、パが11度、勝ち越している。セは1度、勝ち越しただけだ。ところがMLBで同じ12年を見てみると、ア・リーグがすべて勝ち越している。ナ・リーグは一度も勝ち越せていないのだ。

 その大きな要因を考えれば、ひとつの仮説に辿り着く。ア・リーグとパ・リーグの共通点は、DH制を採用しているというところだ。つまりDH制の野球は強い、という仮説が成り立つ。DHが入れば打線に切れ目がなくなり、ピッチャーはホッとする間がなくなる。打順がピッチャーに回ったからといって代打を出されることもなく、投球回数も増える。つまりDH制はピッチャーにとっては過酷であり、その分、鍛えられる。バッターにしてみれば、レギュラーの枠が1つ増えるわけで、それは試合に出るチャンスにつながる。球団にとっては才能を生かすチャンスであり、ファンにとっても選手をさらにもう一人、楽しめるチャンスということになる。ピッチャーが打席に立つ機会を奪うということに、何のマイナスもない。

 セ・リーグは、長きにわたって守ってきた“野球”そのものを大切にしているのだろう。9人の野球だからこそ味わえるピッチャーの交代時期や代打を繰り出すタイミングなどの戦術面には野球の醍醐味が詰まっている。“強さ”より“美しさ”を求めたいという価値観も分かる。しかし、DH制があっても代打の切り札は存在するし、ピッチャーの交代時期はやはり難しい。大谷翔平は特別だと承知はしているが、それでもバッティングのいいピッチャーが出てきたらDHを使わない手だってあることは去年、ファイターズの栗山英樹監督がすでに実証している。

 おそらくは、セもきっかけを探しているのではないか。パに負けているからパのマネをするというのは、セのプライドが許さないのかもしれないし、だからメジャーでナ・リーグがDH制を採用してくれればそれに追随するのに……という流れを期待している旨の話も聞こえてくる。本当にそれが理由で採用に踏み切れていないのなら、時代から取り残されるのもやむを得ないと思う。何かを得るためには、何かを失うのだ。だからこそ――埋もれている才能に光を当て、ひとりでも多くの魅力ある選手をファンに提供するという、ただその一点において、セもDH制を採用すべきだと考える次第である。
文=石田雄太 写真=BBM
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