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レンジャーズ・ダルビッシュ有がもうワンランク上へ

 

食事&栄養摂取への意識は高かったダルビッシュ。それに加え、現在は対戦相手のデータをしっかり把握し、ビデオでも研究する新しいスタイルへと変わってきている


 レンジャーズのダルビッシュ有が試合への準備方法を変えた。かつては「自分のポテンシャルだけで投げていた。スカウティングレポートは聞きますけど、シリーズ前のチームミーティングと、直前のピッチングコーチとのミーティングだけで、普通にそれなりに投げていましたから」とのこと。タイガースのエース、ジャスティン・バーランダーも同じだが、ズバ抜けたボールを投げられる投手は、自身の強みを生かすのが一番(USE THEIR STRENGTH)である。

 だが、年齢を重ね、体力の限界を感じるようになったり、長年の対戦で相手に覚えられてしまったと感じるなら、抜本的な改革が必要になる。「(現地時間6月2日)アストロズ戦で球数をたくさん投げさせられて、4回まで0点に抑えたけど、勝っている感じはしなかった。もう一つ上のレベルに行くにはどうすれば良いかと考えたときに、ある人と『相手もダルのことを知っているよ。もっと自分のデータを見たり、相手のデータを見たりしたら』という話になって、そうだなと。聖子(夫人)とも話をして、彼女もビデオを見たと。吉田沙保里さんがライバルで、あるときから急に簡単に相手に入られるようになって、自分の弱点も分かったと」。

 レポートにしっかり目を通した上で、さらに時間をかけてビデオを見る。「スカウティングレポートだって毎回合っているわけではない。この打者はスライダーが得意ですよといっても、インコースにツーシームを投げたあとのスライダーだとそうでもなかったり、そういうのはデータに出ない。実際に自分で映像を見たほうが分かりやすい」。

 通算5714三振、史上最高のパワーピッチャー、ノーラン・ライアンは46歳の引退まで力で相手を抑え込んだ。しかしながら、今ならそうは行かないかもしれない。ライアンのころは、データは少なく、試合前のミーティングも短かったし、新聞のボックススコアを見て、誰が当たっているかをチェックするだけの投手だっていた。だが今は、チーム単位の非公開のデータベースだけでなく、誰でも見られるベースボールリファレンス、ファングラフス、ブルックスベースボールなどのインターネットのサイトに詳細なデータが出ており、日々アップデートされている。

 加えて、ひと昔前は良い打者でも外角に投げれば良かった。ヒットになってもホームランにはならなかったからだ。しかし現在、打者はパワーアップし、ボールもよく飛ぶ。ホームベースの両サイドを厳しく突かねばならない。ダルビッシュも最近は内角攻めが増えている。

 ところで、ダルビッシュはプロになってからトレーニングや、食事&栄養摂取がいかに重要かに気付き、誰にも負けないほど勉強した。完璧主義者ゆえだが、今回もそうなるのではと訊いてみた。

「自分もそう思います。やっていて、性格的に合っている。どんどんいろんなところに入り込んでいくので自分には合っているのかな」

 新たな進化のきっかけに――。とても楽しみだ。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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