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高校野球リポート

「残り5本」の険しい道へ挑む早実・清宮幸太郎

 

通算本塁打の記録更新は周囲が考えるほど簡単ではない


 残り4本でタイ、そして、5本で記録更新。だが周囲が考えるほど、そう簡単にはいかない気がする。

 早実・清宮幸太郎の高校通算本塁打だ。西東京大会の開幕時点で103本。歴代1位とされる神港学園高・山本大貴(元JR西日本)の持つ107本に迫っているが、夏の地方大会前に超えておきたかったのが“本音”だろう。

 清宮が試合の流れを変えられる本塁打に、野球人としてロマンを感じているのは確か。しかし、主将という立場上、個人の欲望を前面に出すわけにはいかない。

 だが、周囲はサク越え、場外弾まで期待する。5〜6月にかけ熊本、沖縄、愛知、香川と続いた招待試合で、清宮はその「リクエスト」にバットでこたえ続けてきた。招待試合とは、練習試合の延長線上にある非公式戦。ある意味、勝敗は度外視され、相手投手も清宮に真っ向勝負できる。つまり、力試しの場だった。

 もちろん、失投を逃さず、スタンドインさせた清宮の技術は素晴らしいが、負ければ終わりの夏は、そうもいかない。三番・清宮の後の四番には高校通算40本塁打の2年生・野村大樹が控えているとはいえ、チャンスで清宮が歩かされる場面は増えるはず。

 走者がいなくても、簡単にストライクは投げてこない。今春も各校は極端なシフトを敷いてきたが、夏も対戦チームはなりふり構わず、対策を立ててくるに違いない。後がない夏に限っては、軽率に「量産」と表現するのは、控えなければならない。

 さらに、清宮に立ちはだかるのがコンディションの調整だ。7月8日の開幕式直前まで定期試験があり、勉強にも目を向けなければならなかった。初戦(3回戦)は15日。最後の練習試合(香川招待試合、6月17、18日)から約1カ月が経過し、実戦勘が心配される。

 思えば春も、かつてないスランプに陥った。3月8日の対外試合解禁日に79号を放って以降、80号が飛び出したのは練習試合、センバツを経て都大会準々決勝(4月15日)で8試合、40打席ぶりだった。このときもセンバツ開幕前に定期試験があり、帰京後は新学期に入り、学校行事が重なった。早実・和泉実監督によれば、練習に打ち込む時間をとることが厳しかったという。振り返れば、毎夏、早実は初戦で苦戦している。そうした背景も少なからず、影響しているのかもしれない。

 記録更新まで残り5本への道のりは、「険しい」と予想する中で、清宮はどう挑んでいくのか。早実は第1シードで、順調に勝ち進むとすれば、準々決勝以降はさらに本塁打のハードルは高くなるだろう。だからこそ、3回戦から5回戦くらいまでにきっちりと“決めておく”必要があると思う。

「記録」に興味を示すのは周辺だけ。当事者は目の前の「勝利」しか見ていない。しかし、「107」とも向き合っていかなければならないのが、怪物・清宮の宿命なのである。
文=岡本朋祐 写真=中島奈津子
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