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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

若手の道しるべになる楽天・松井稼頭央

 

6月26日のオリックス戦で3年ぶりにショートを守った松井


 4年ぶりの頂点へ後半戦もソフトバンクと優勝争いを繰り広げる楽天には、強力なベテランがいる。日米合わせて今年プロ24年目の松井稼頭央だ。

 西武時代の2002年にはトリプルスリーも達成。遊撃手としてはゴールデン・グラブ賞を4度獲得した名手だが、15年に外野手へと転向した。年齢や体力を考慮して、とのことだが、次世代を育てるために身を引いた形でもあった。ただ、今年は茂木栄五郎が打撃に力強さを増し、「一番・遊撃」で台頭したが、現在は負傷離脱中。遊撃のスタメンには三好匠、守備固めでは阿部俊人が入り、トップバッターを島内宏明が務めてなんとか茂木の穴を埋めている。

 そんな状況の中、6月26日のオリックス戦(Koboパーク宮城)、松井はおよそ3年ぶりにショートを守った。松井の出番は1点差に迫った9回裏、二死一、二塁でやってきた。阿部の代打で左打席に立つと、左前打で同点。敗戦ムードを払拭してみせた。そして延長10回からはそのまま遊撃の守備に就き、フライ処理も併殺も難なくこなすと、勝利と等しいほどの大きな引き分けに持ち込んだ。

 今年はスタメンでの出場は減っているが、代打、代走、守備固めと接戦の状況でこそ、出番が多い。そんな中でこの一戦は、梨田昌孝監督に新たな選択肢を与えることにもなった。

「阿部もいるけど、松井にも頑張ってもらってね」

 スイッチヒッターで足も速く、内外野を守れる切り札。チームの誰よりも実績があるベテランでありながら、その状況を受け入れ、結果を残す。それが松井稼頭央という野球人だ。ベテランながら全体練習の1時間前にはグラウンドに出てバットを振る。これだけの才能がありながら努力を惜しまず、勝利のために自己犠牲を厭わない松井が、後半戦も必ず、チームを助けてくれるだろう。

 かつて誰よりも派手な光を放っていた俊足巧打の名手は今、チームの穴を埋めるピースとして、控えめながら誰よりも強い輝きを放っている。その光が若きチームメートたちの道しるべとなり、4年ぶりの優勝へと導いてくれるだろう。
文=阿部ちはる 写真=桜井ひとし
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