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メジャーの変化球事情に異変? 見直されてきたドロップ系カーブ

 

約半分の確率でカーブを投げ込む23歳のマクラーズは現地時間7月11日現在、7勝2敗。91回1/3で106三振を奪うなどアストロズのエース格となっている


 どんなものにもサイクルがあるが、MLBでは最近、カーブ(ドロップ系)の使い手が増えつつある。

 シンカー、スライダー、カッターなど、真っすぐの軌道から変化する高速変化球が全盛だったが、打者はアジャストしてきた。そこにゆっくりとした、大きな弧を描くカーブを使う。遅いから打たれるのではないかと思うが、あの軌道ゆえ打者の中心視力からいったん中心外視力にそれて、また戻ってくる。真っすぐの軌道で目付けをする打者には、ここに来るだろうというところで振るしかない。

 今、カーブの使い手が多いのは、アストロズ、ドジャースなどデータを重視するチームである。例えばアストロズのランス・マクラーズは今季カーブが45パーセント、シンカーが22パーセント、フォーシームが19パーセントである。コリン・マクヒューは(2016年データ)フォーシームが33パーセント、カーブが30パーセント。ドジャースのリッチ・ヒルはフォーシームが50パーセント、カーブが41パーセントである。

 バート・ブライレブンは1970年代から80年代にかけてカーブの名手として鳴らし、通算287勝、殿堂入りした。

「私は子どものころ、ドジャースファンで、サンディ・コーファックスのカーブを見て育った。当時のマウンドは今より5インチ高かったから、より効果的だった。それが69年から今の高さになった。60年代、ツインズなどでカーブで活躍したカミロ・パスカルは、70年代になって低いマウンドは嫌いだとこぼしていたよ」

 80年代以降、スライダーが主流になっていくのだが、ブライレブンはカーブは教えるのが難しいからだという。

「アメリカには速い真っすぐを投げる投手はいくらでもいるが、ボールを上手にスピンさせられる者はそうはいない。仮にうまくスピンできていたとしても、それをコントロールできる若手はさらに少ない。ストライクが入らなければ、マイナーのコーチはスライダーかカッターを覚えろとなる」

 カーブは誕生から150年と、最も古くからある変化球だ。それが紆余曲折を経て今、よみがえったのは、新しいテクノロジーとも関係がある。最近ではトラックマンでボールの回転数を計測できるが、アマチュア選手や、マイナー選手のデータを収集することで、効率的にボールをスピンさせるのが得意な若手を見つけられる。そしてカーブをどんどん投げろと指導する。

 ブライレブンは「私は満塁でカウント3―2でもカーブを投げられた。インディアンスでバッテリーを組んだクリス・バンドー捕手とは息が合って、迷わずカーブ。三振に取って、SEE YOU LATERだったよ」と振り返る。アストロズのマクラーズはまさにそんな投手。こういう投手がさらに増えれば、メジャー全体の配球ももっと変わっていくのではないか。

 ちなみに日本人選手ではドジャースの前田健太投手がカーブを13パーセント使用。レンジャーズのダルビッシュ有投手は4.4パーセントだが被打率は.039。ダグ・ブロケール投手コーチは「もっと使うべき」と勧めている。本人も「自分としてはそこまで良い球とは思っていないですけど、最近一番通用しているんじゃないのかなと思いだしてきています」と話していた。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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