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MLB最新戦略事情

若い世代のファン獲得に待ったなし!! 迅速な試合運営に選手会も選手たちも了承へ

 

試合のスピーディー化について選手会との話し合いが順調な展開を見せているマンフレッドコミッショナー。若い世代のファン獲得へ向け今後も試行錯誤を続けていきそうだ


 オールスターゲーム当日のBBWAA(全米野球記者協会)ミーティング。いつものように招かれたロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはランチ後、記者たちの質問に応じた。たくさんの議題の中、最も重要なのは何度もこのコラムで触れた、彼のトッププロジェクト、ゲームのペースアップである。若い新たな世代にプロ野球を受け入れてもらうための改革だ。

「私が野球についてどう考え、何が好きなのかは問題ではない。問題はファンが何を見たがっているか、だ。リサーチによると、ホームランは人気がある。三振もクレイトン・カーショーのような投手がどんどん取っていくのは良い。しかしながらゲームの終盤、一番盛り上がるときに、リリーフ投手が頻繁に代わり三振が続くのはどうか? 試合がいちいち止まり、打って走ってのアクションにも乏しい。それは問題ではないか」

 前回、彼がこの問題について話したのは春のキャンプ中、アリゾナのホテルだった。怒りを露わに選手会の協力がないことを批判し、17年シーズンが終わったら強権発動、新ルール強制導入も、と口にした。20秒のピッチクロック導入、ストライクゾーン変更、捕手やコーチがマウンドに行く回数の制限などである。だが、今回はずいぶん穏やかだった。選手会との交渉が良い方向に向かいつつあるのだろう。

 この改革は野球の現場に大混乱をもたらすかもしれない。だからこそ選手会の協力が不可欠なのだ。コミッショナーの後にこのミーティングに現れた選手会のトニー・クラーク代表も「話す用意がある」と明言。大多数の選手は依然ピッチクロックなどに反対だが、そうも言っていられない。「デリケートなバランスがある。今の若いファンがテレビで野球を見ようとしないのに、そのままにしていて良いのか? いかにこの産業を発展させていくか、前に進まないと」と応じる。数時間後、試合前のマーリンズ・パークのクラブハウスでは、記者たちが現場のベテラン選手に反応を聞いていた。選手は戸惑いつつも、マンフレッドが待ったなしの姿勢なのは知っているため「われわれの声にも耳を傾けてほしい」と言いながら、概ね従う考えだ(そうするしかないのが現状)。

 夏の球宴、驚いたことに中継のFOXテレビがMLBの協力を得て新たな演出をほどこしていた。1回表、打席に入る前にホセ・アルトゥーベがテレビレポーターのインタビューを受ける。試合の途中、ブライス・ハーパーとジョージ・スプリンガーがそれぞれマイクを付け、中継陣と話しながら外野を守る。イニングの始まる前に、中継レポーターのA・ロッドが内野を回り、二塁のダニエルマーフィー、遊撃手のザック・コザートらをインタビューした。

 昨年までのように、ワールド・シリーズのホームフィールドアドバンテージがかかる、真剣勝負なら無理な企画だが、それもなくなり、堂々とショーの要素を強めていた。1年前、球宴のテレビ視聴率が5.4%と過去最低に落ち、待ったなしの危機感もあったのだろう。若い世代のファンを獲得しないといけない、メジャー・リーグは本気なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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