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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

松坂大輔より先に「怪物」と呼ばれた男

 

豪快なスイングで甲子園を沸かせた古木克明


 週刊ベースボール8月7日号は甲子園特集。「怪物がいた夏」と題して、過去に聖地を沸かせたスーパースターにクローズアップするとともに、彼らに挑んだ同世代の選手の証言を集めたものだ。

 それと同じタイミングで、古木克明さんの話を聞く機会があった。豊田大谷高(愛知)からドラフト1位で横浜に入団し、オリックスにも所属した左のスラッガー。高校3年時の1998年に甲子園を沸かせた「松坂世代」の一人に数えられているが、古木さんは高校2年夏に甲子園に出場しており、1回戦の長崎南山高(長崎)戦で2打席連続本塁打。そのインパクトは強烈で、当時の雑誌には「怪物」の二文字が躍っていた。つまり、「怪物」と呼ばれたのは松坂大輔よりも先だったのだ。

「甲子園で2本打って、藤川球児(高知商高、現阪神)とともに注目されることになって」。当時は16歳。激変する周囲に、心を乱されることもあったという。そして、最上級生となった春のセンバツには出場することができなかった。高まる一方の期待に応えられず、悩んだ日々もあったという。

「そうこうしている間に、松坂大輔(横浜高、現ソフトバンク)を筆頭に、すごい選手がたくさん出てきましたよね」。最後の夏、1回戦では村田修一(現巨人)のいる東福岡高(福岡)、準々決勝では和田毅(現ソフトバンク)のいる浜田高(島根)と対戦して勝利。だが、準決勝で京都成章高(京都)に敗れ、全国制覇はならなかった。「多くの選手がのちにプロ入りしましたし、当事者ながら『なんだ、この世代は!?』と思ったものです」。レベルの高い多くのライバルと戦えたことは、一つの誇りとして残っているという。

「松坂世代」というだけに、松坂大輔、春夏連覇を達成した横浜高がこの世代の主役ではあるが、古木さんをはじめ、同学年のライバル選手がいたからこそ、後世まで語り注がれる「○○世代」。いよいよ今年の甲子園が開幕する。バイプレーヤーまで取り上げた今特集で、ぜひとも懐かしさに浸っていただきたい。

文=富田庸、写真=BBM
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