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「歩けなくなってもいいから全力で」。早実・清宮に107号を被弾した八王子のエース・米原大地

 

負けはしたが堂々たるピッチングを見せた米原


 負けて爽やかだった。

「高校からあれだけ注目されている選手と対戦できたことは、これからの野球人生の貴重な経験になる」

 7月28日、神宮で行われた西東京大会準決勝。7回、早実・清宮幸太郎にソロアーチを浴びた八王子の右腕エース・米原大地(3年)は言った。この一発が歴代1位とされる神港学園・山本大貴(元JR西日本)に並ぶ高校通算107号だった。米原は7回3失点。チームは1対4で敗退し、2年連続の甲子園出場を逃した。

 昨夏の準々決勝で早実と対戦した八王子。3点リードした9回から救援していた米原は一死一、三塁で清宮を打席に迎えた。大ピンチに内角ストレート勝負で右飛。犠牲フライによる1失点でしのぎ、6対4と2点差で逃げ切った。八王子はその勢いで勝ち上がり、春夏を通じて甲子園初出場を決めている。

 2年連続を狙った今夏、米原にアクデントが襲う。西東京大会初戦となった3回戦(対中大付)で6月から違和感のあった左腰に痛みが走った。以降、2回にわたり、痛み止の注射を6本打ち、この早実との準決勝を迎えていた。

「マウンドに立たせてくれた監督、チームメート、トレーナーら皆に感謝したい」

 清宮対策は万全だった。昨夏は内角を攻めたから「(相手は)今年も押してくるだろう、と。逆手に取って真っすぐは見せ球にして、外のチェンジアップで勝負しようと思った」。春の都大会が終わってから完全マスターした変化球で第1打席(二ゴロ)、第3打席(捕飛)を打ち取る。第4打席、カウント2ボールからの3球目、「しっかり投げ切ることができた」というチェンジアップだったが、左中間へライナーで運ばれた。

「ヒット性の当たりだとは思いましたが、あれが入ってしまうとは……。すごいバッターです。あのボールに悔いはありません」

 敗れたとはいえ、故障を抱えながらも、立派な投球だった。そのメンタルの強さに惹かれた。

「注目されている早実が相手で、球場の雰囲気が違うことは覚悟していました。ただ、早実、そして清宮のことを考えてしまうと、自分たちが自然と下手、下手になってしまう。それでは攻め切ることができない。同じ高校生なんだ、と思って投げた」

 試合当初はセットポジションだったが、4回途中から本来のワインドアップに戻している。

「ワインドアップだと体を反るので、腰への負担もくる。でも、怖さを持っていたら投げられない。後悔をしたくない。後ろにも良い投手が控えている。いつ立てなくなってもいい。歩けなくなってもいいから全力で投げた」

 プロ注目右腕の進路は「上のレベルで力を磨きたい。進学? まだはっきりしない」と明言を避け、「プロ? 今はそこまでの自信はない」と言葉を選んだ。将来性抜群の180センチ右腕・米原。まずはゆっくり、治療に専念してほしい。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
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