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夏の甲子園を100倍楽しむ方法

かみじょうたけし「夏の甲子園を100倍楽しむ方法、教えます!!」

 

バラエティー番組内の企画、『高校野球大大大好き芸人』としてすっかり定着したお笑い芸人のかみじょうたけしさん。その高校野球に対する愛情は野球ファンに広く知られるところ。今回はかみじょうさん的“夏の甲子園の楽しみ方”を披露。そして、高校球児たちにエールを送ってもらった。

近所の兄ちゃんの応援がきっかけで


今年はどれだけの熱戦が繰り広げられるのか。かみじょうさんは心待ちにしている


 まず、僕が高校野球にハマるきっかけから話しましょう。あれは1989年、小学6年時のことでした。僕の地元は淡路島なんですけど、その夏、近所の兄ちゃんたちがみんな通う津名高が県の準決勝まで進んだんです。そのとき思ったのが、「こんな小さな町から、甲子園に行けるんか!」ということ。果物屋の兄ちゃんや電器屋の兄ちゃん……年が離れていても、みんな子どもたちと一緒に遊んでくれるんですよ。「応援に行きたい!」と親父に頼み込んで、明石球場(現明石トーカロ)に連れて行ってもらったんです。

 神戸弘陵高との試合でした。お兄ちゃんたち、僕らと遊ぶときはもちろん、手加減してくれるじゃないですか。それでも小学生のころはナマイキでしたから、「そんなヘボボール、いつでも打てるわ!」とか言ってたんです(笑)。それが球場についてブルペンをのぞいてみたら……。その兄ちゃんが「バチコーン!」とえげつない球を投げているんです。普段見せないような表情だったし、鳥肌が立ったのを覚えてますね。

 結局、津名高は負けてしまうんですけど、神戸弘陵高が甲子園出場を決めて。それで今度は「甲子園に行きたい!」と再び親父に頼み込み、連れて行ってもらったのが最初でした。

 実は小学1年生くらいのとき、阪神戦に連れて行ってもらいました。でも高校野球では初めてで、球場に入った瞬間、その広さに驚きました。内野席をあちこち歩き回ったり、ベンチ前の円陣を見つけると、監督の話が聞こえてくる距離の近さだったり。とにかく目に入るあらゆるものが「すごい!」というのが第一印象でしたね。

アルプス席は物語の宝庫


 夏の甲子園出場をかけた地方大会が行われる6月から7月は、僕が一番、高校野球を見る時期ですね。甲子園はもちろんすごい場所なんですけど、僕の中では「頑張ったご褒美」という位置づけ。そこを目指してやっている地方大会の決勝、これが熱のピークなんです。甲子園に出られるか、出られないか――。その観点では、そこで負けてしまったら、ある意味、初戦で負けてしまうのと一緒ですから。今年も、時間を見つけては見に行きましたね。

 さて、今回のテーマは「甲子園を100倍楽しむ方法」でしたね。見る場所としては、やはりアルプス席をオススメします。そこには当然、その学校の生徒、選手の両親や親戚のおっちゃん、出身チームの指導者、後輩たちがたくさんいる。明らかに応援が一番濃く、熱い場所なんです。

 隣を見たら、手を合わせて祈っている人がいたりして。そんなとき、「誰を応援しているんですか?」って聞いてみるんです。すると、「実は○○の父なんです」とか、いろいろなエピソードを聞けたりできる。僕はそんなヒューマン・ストーリーみたいなものが好きで、しょっちゅうアルプス席で“取材”しています(笑)。ありがたいことに、最近では僕の顔を覚えてくれている人もいて、「かみじょうさん、あれがウチの息子で……」と自らストーリーをしゃべってくれる人もいますね(笑)。

 もちろん、テレビで見たほうが投手の球種などは分かりやすいです。でも、生で見んと得られん情報もあるんですよね。やっぱり高校野球が好きな人には、ぜひ甲子園に足を運んでもらいたいです。

 また、地域によって応援の仕方に特徴が出ます。ある沖縄の高校はゴーヤを持って応援していて、選手が「カキーン!」とヒットを打つと、テンションが上がったのか「ガリッ!」とかじってました(笑)。また、ある家族はシーサーの置物を持ってきていて、別の沖縄の若者が誤ってそれを落として割ってしまったんです。「あんた、なにやってんの! ウチの守り神なのに!」とお母さんが言っていたら、本当に満塁ホームランを打たれてしまったり……。とにかくいろいろなドラマに遭遇できるところがいいんです。

 結局、その沖縄の高校は負けてしまいました。すると、さっきのゴーヤをかじっていた人、その食べさし(食べかけ)を次に試合をする高校の野球部員に手渡し、「これはお前たちに託した! オレたちの分まで頑張ってくれ!」と。優しい子たちだったんでしょう、その託された食べさしのゴーヤを持って応援してました(笑)。

暑さ対策は肌に霧吹き


スタンドも暑さが厳しい甲子園。水分補給には気を付けたい


 あと、夏の甲子園は本当に暑いです。秋田の高校の応援で、2体のなまはげが登場したことがあったんですけど、そのうち1体の動きが徐々に鈍くなって。そして僕の隣にペタンと座り込むと、「すみません、お水ください」。あわてて、なまはげの中に水を差し出しました。炎天下は本当に危険ですから、水分補給には気をつけたいですね。

 で、僕が編み出した暑さ対策は肌に霧吹きです。詳しいことは分からないんですけど、「気化熱」っていうんですかね? スタンドの一番上は柵になっていて、風が通りやすい。よくいう浜風ですね。そこで肌にシュッシュッと霧を吹きかけると、風とともに汗が蒸発していくんです。風自体は生ぬるくて涼しくならないけど、霧を吹きかけるだけで全然違いますよ。霧吹きは100均でも売っているので、ぜひお試しください。

 そして試合以外の見どころといえば、試合前ノックでしょう。このうまさで相手をビビらすというか。流れるように進み、最後のキャッチャーフライが済んで「ありがとうございました!」。これで(持ち時間の)7分ちょうどとか、もはや芸術の域ですよ! シートノックを見たらその高校の戦力がある程度分かりますし、外野手の肩の強さも必ず見る部分です。

 最後に、僕から高校球児の皆さんにメッセージを送るとすれば、「完全燃焼」ですね。全国制覇できる高校は1校のみで、ほかはすべて負けてしまう。でも、「完全燃焼」は全員が目指せると思うんです。高校野球への思いをすべてぶつけて、全部出し切ってほしいですね。「完全燃焼」してください!

●かみじょう・たけし(お笑い芸人)
1977年12月31日生まれ。兵庫県淡路島出身。ピン芸人として、坂東英二のモノマネなどで活躍。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「高校野球大大大好き芸人」でおなじみ。兵庫県出身ながら大の楽天ファン。

取材・構成=富田 庸 写真=太田裕史、BBM
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