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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

孤独なマウンドで空を見上げてつぶやく楽天・則本昂大

 

投手はマウンドでは孤独だ。則本は空を見上げてつぶやくことで気持ちを整える


 一死満塁のピンチで、広陵高・山本雅也は2度目のマウンドに上がった。8月11日の高校野球選手権大会第1試合、中京大中京高との一戦は広陵高の7点リードで9回を迎えた。2番手の山本は9回裏一死とし、2年生の森悠祐へとマウンドを託した。

 しかし1点を返され、さらにピンチとなると、再びマウンドに戻ってきた。仲間からの鼓舞で笑顔を見せるも、顔は引きつったままだ。二死から押し出し四球。じわじわと迫る相手の勢いとスタンドの声援。その重圧と必死に戦っていた。この回を3失点で切り抜けた広陵高は10対6で勝利したが、山本の表情は喜びよりも安堵感のほうが強かった。

 ピッチャーはいつも、勝利への重圧と期待を背負って孤独と戦っている。楽天のエース・則本昂大は言う。

「マウンドってね、結局は一人なんで。そのマウンド上で、自分に言い聞かせたりはしています」

 連続2ケタ奪三振記録を更新していた期間は、どうしても邪念が入ってしまうことがあったという。スタンドのファンの歓声やため息に、三振を狙わなくてはいけないのかと考えてしまったり、勝負を急いでしまったりすることもあった。そんなときは冷静になり、やるべきことをもう一度自分に言い聞かせている。「上を向いたほうが落ち着くし、下を向くよりは全然いいかなと思って」と今季からは空を見上げてつぶやくようになった。

 印象的だったのはプロ野球新の7試合連続2ケタ奪三振となった6月1日の巨人戦(Koboパーク宮城)の7回だ。6回に逆転をしてもらった直後のマウンド。そこまで7奪三振でリードはわずかに1点。日本記録とチームの勝利をかけてのマウンドだ。その場面で則本は空を見上げ「三振どうこうというのはあるけど、とにかく勝つことがすべて」と言い聞かせ、表情は一段と引き締まった。結果、7回に2三振を奪い、さらに8回に10三振目で記録を達成。チームも勝利したが、ギアが上がった瞬間の則本の表情や姿は記録とともに刻まれていくことになるだろう。

 孤独なマウンドで見せる選手たちの表情はとても魅力的だ。それは球児だろうとプロ野球選手だろうと変わらない。

文=阿部ちはる 写真=榎本郁也

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