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【夏の甲子園プレーバック】西武 菊池雄星を襲った背中の異変

 

準決勝敗退後、泣き崩れた菊池。日本一には届かなかったが、このあと宿舎に戻ったときには「やり切った感しかなかった」という


 左肩甲骨の下部に生じた痛みは、MAX155キロのみちのくの剛腕から輝きを奪い取った。2009年8月23日、準決勝の中京大中京戦。先発マウンドに立てなかった花巻東の菊池雄星はピンチで救援登板。4回二死満塁で強打の河合完治に投じた渾身のストレートは139キロ。走者一掃の三塁打をはじき返された。わずか打者4人に11球を投げてマウンドを降り、結局1対11で敗れ去った。

 予兆はあった。痛みを覚えたのは、3ホーマーを浴びながら118球を投げ抜いた1回戦、長崎日大戦のあとだ。MRI検査では骨や関節に異常は見られない。ひたすら休養することが最大の治療法。だが、大会は回復を待ってくれない。連日のマッサージ治療で痛みを和らげ、あとはどこまでもつかだった。初戦から中4日で2回戦の横浜隼人戦、さらに中2日で3回戦の東北戦と、いずれも1失点完投勝利。東北戦では154キロをたたき出した。

 3回戦から連投となった準々決勝の明豊戦。「予兆」はついに「異変」になった。1点を失った5回二死、マウンドからレフトの守備位置に下がり、スタンドはざわめいた。スコアボードからも菊池の名前が消えた。苦痛に耐える菊池の状態を見た佐々木洋監督の決断だった。「雄星がいない……」。発奮したナインは激闘のシーソーゲームを延長10回の末に制し、岩手県勢90年ぶりの夏4強へ進出した。

 中1日の準決勝当日。深呼吸をしただけで、大声を出しただけで激痛が走る。とてもマウンドに立てる状態ではなかった。

「最後の夏はやっぱり不十分な状態で、満足いくボールが投げられずに終わったので、申し訳ない気持ちが強かったです」と、のちに当時について語った菊池。センバツは準優勝、夏はベスト4に終わり、みちのく悲願の夢を達成できなかった無念を胸に抱きながら今季は左腕最速の158キロをマーク。西武のエースという枠を超え、球界最強の先発左腕へと成長を果たした。

写真=BBM
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