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仮面の告白

【谷繁元信】キャッチャーの「いい素材」とは?

 

『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている。その一部を抜粋して、ここにお届けする

レギュラー捕手は打てないとダメ


やはり小林には打力をアップさせてほしいという(写真=田中慎一郎)


 球界のキャッチャー事情を見ると、総体的に感じられるのは、各球団の顔と言えるキャッチャーのいるチームが少ないということです。数はいても、いい素材が少ないのです。その中でジャイアンツの小林誠司はリードに関しては随分周りが見えてきて、去年より明らかに成長しています。WBCでの経験も大きかったのでしょうが、何より自分が生きるためには何をすべきなのかということを考え始めたのだと思います。

 注文をつけるとすれば、レギュラーとしてはもう少し打たなければいけません。僕も入団1、2年目に打率2割を切ったことがありました。しかしレギュラーを張れるようになって以降はある程度ホームランも打ち、打点も挙げていました。最低ラインを打たないと、ここぞという場面に代打を出されてしまう。これは調子の善し悪しではなく、2割もいかない選手はもともと打てないわけですから、本当の意味でのレギュラーではないと思うのです。

 高橋由伸監督も我慢して小林を使っていると思います。考えようによっては一番から七番までで点を取りにいけばいい。僕も打てないときには、「いいよ、一番から七番までで点を取るから」と言われたことがあります。いまのジャイアンツもそれだけの得点力があるので救われていますが、ここぞという勝負どころでは監督も頭を悩ませるわけです。

鏡に向かって一人で……


若かりし日の谷繁氏。キャッチャーの“雰囲気”を出す練習もしたという(写真=BBM)


 では、キャッチャーの「いい素材」とはどういうことかというと、まず雰囲気があることです。これを具体的に説明するのは難しい。例えばレギュラーを取るぐらいの選手というのは、頭角を現したときに何か光るものを持っているのです。座っている姿形で「こいつ、やりそうだ」と思わせるだけのオーラが伝わるのではないでしょうか。

 自分の姿は自分で見られませんので、現役時代の僕がどうだったかは分かりません。しかし、若いころは、座る形、構え方、サインの出し方を「鏡の前でチェックしてみろ」と言われ、スイングルームの鏡の前でキャッチャー座りをして、鏡に向かって一人でサインを出す練習をしていました。

 キャッチャーの雰囲気というのはピッチャーの心理にも影響します。自信がなさそうに構えているキャッチャーでは、ピッチャーも信頼して投げられません。僕も若いころ経験したのですが、頭が混乱すると指がどもるのです。自分の頭の中ではストレートだと思っているのにスライダーのサインを出したこともありました。ですから、雰囲気というのは大切なのです。そんな雰囲気の持ったキャッチャーに、今シーズンは一人でも多く出てきてほしいと思っています。

●谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)
1970年12月21日生まれ。広島県出身。江の川高から89年ドラフト1位で大洋(現DeNA)入団。2002年FAで中日へ。14年から監督兼任。16年から監督専任も同年8月9日付で退任。現役生活27年の通算成績は3021試合出場、打率.240、229本塁打、1040打点。

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