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【夏の甲子園プレーバック】甲子園優勝投手が背負う責任と自覚 中日 小笠原慎之介

 

投打にわたる活躍で全国制覇の原動力となった小笠原


 2015年夏、東海大相模高の小笠原慎之介(現中日)は、向こう1年間、世界でたった一人にしか許されない称号を手に入れた。

「夏の甲子園優勝投手」

 決勝まで5試合に登板し、3勝をマーク。仙台育英高との決勝戦では6失点を喫しながらも同点の9回に自ら決勝本塁打を放つなど投打で魅せ、完投勝利で歓喜の輪の中心となった。

 高校球児ならだれもが夢見るであろう栄誉。だが、それから11カ月後の16年7月、プロとして中日のユニフォームを着た小笠原はこう口にしていた。

「8月には次の甲子園優勝投手が決まります。1年間背負ってきたものが、また次の選手へと変わっているわけじゃないですか。毎年毎年、優勝投手は生まれるものなので、早く甲子園が終わってほしいですね。たぶん、解放されていると思いますよ。東海大相模高の小笠原じゃなく、中日ドラゴンズの小笠原になっていると思います」

 同年の5月終わりには早くもプロ初登板を初先発で飾っていた小笠原。過去の栄光にすがるのではなく、新たな舞台で新たな結果を残す。その瞳はすでに前だけを見つめていた。

 16年シーズン、小笠原は2勝をマーク。この2勝は同年の高卒入団投手としては唯一の白星でもあった。

「誰よりも早く勝利投手になりたいと思っていましたね。ドラフト1位ということもありますが、昨夏の甲子園優勝投手としても。それなりのプレッシャーはありましたけど、勝ちたかった」

 世代のトップとしての責任と自覚。それを意識することで、自らを叱咤激励していたのかもしれない。

 プロ2年目の今季は8月18日現在で15試合に投げて2勝6敗。奇しくもルーキーイヤーと全く同じ数字だが、防御率は3.36から6.29と悪化。後を追う同世代の選手の足音が聞こえているはずだ。

 もう一度、誰も追いつけない場所へ。小笠原はプロでも、唯一無二の存在を目指している。

写真=BBM
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