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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

広陵高・中村奨成が予告した大暴れ

 

真剣な表情で打撃練習をする広陵高の中村奨成


 5月の半ばごろ広陵高を訪ねた。目的は2014年の夏以降、全国の舞台から遠ざかる広陵復活のキーマンとして、捕手の中村奨成とエースの平元銀次郎に話を聞くためだ。

 中井監督の取材を終え、バッテリーが投球練習を行うというブルペンを見学することに。たまたま監督室を訪れていた中村が、ブルペンまでの案内役を買って出てくれたのだが、その道すがら、何気なく聞いた高校卒業後の進路についての彼の発言が忘れられない。

「1年生から使ってくれた中井先生のためにも、まず甲子園に行って恩返しがしたい」と前置きしつつ、真っすぐにこちらを見つめてこう答えた。「卒業後はプロ1本で考えています。でも、自分はまだ甲子園にも出たことがないですし、アピールが足りない。必ず甲子園に出て、(良いパフォーマンスを)見せられるだけ見せて、その結果、上位で指名されたらいいな、と思っています」。

 あれから3カ月、高校野球通など知る人ぞ知る存在だった「広陵の中村」は、鬼門であった広島大会を勝ち抜き、甲子園では1回戦の中京大中京高戦から3試合連続でホームランを放つなど、この夏のスターに。目論みどおり、ドラフト1位候補にリストアップする球団も現れ、いまや早実の清宮幸太郎をしのぐほどの人気を博している。大舞台で結果を残せる勝負強さとハートの強さ、そして何よりそのハングリーな心がプロ向きと言える。

 広陵高出身で巨人の捕手・小林誠司になぞらえて「二世」などとすることには辟易するが、ただ中村はこの小林を「憧れの存在」と言ってはばからない。スローイング、特にリード面と今春の第4回WBCでも見せた投手とのコミュニケーション力を学びたい能力として挙げ、小林の話題になると目を輝かせていた。

 中村、そして小林の両捕手を育てた中井監督に言わせれば、高校3年時点での力量差は「月とすっぽん」で中村を推す。小学校3年時からマスクをかぶる中村に対し、広陵高入学後の1年秋に投手からコンバートされた小林とでは、そもそも比較にならないのは当然かもしれない。一方で広陵高卒業後、同大、日本生命を経て巨人に1位指名されるまでに成長を遂げた小林の、コツコツと努力を積み上げていく能力を高く評価する中井監督は、中村のプロ入り後の成否について、この小林の能力をカギとする。

「誠司の努力を重ねていくことのできる能力は立派です。奨成も同じようにこれからずっと努力をし続けることができるかどうか、でしょう」

 国体なども含め、まだ高校野球生活を残すドラフト前の高校生ではあるが、すでに5年後、10年後の姿が楽しみでならない。

文=坂本 匠 写真=山口高明
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