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輝き続ける西武の背番号「18」

 

「オリエント・エクスプレス」の異名


1987年から97年の11年間、背番号「18」を着け、その間、103勝をマークした郭


 大器が覚醒しつつある。プロ2年目を迎えた西武の右腕、多和田真三郎。8月12日のロッテ戦(ZOZOマリン)、19日の日本ハム戦(札幌ドーム)で連続完封、自身5連勝を飾った。

 昨年、富士大からドラフト1位で入団。体を低く沈み込ませる独特のフォームから浮き上がるようなストレートとキレ味鋭いスライダーが武器だ。今年は辻発彦監督から菊池雄星と左右の両輪として期待されていたが、右肩の違和感で4月末に登録抹消。ファームでの雌伏の時を経て、一軍で輝きを放ち始めた。

 期待の大きさは背番号でも分かる。「18」。西武球団での、その系譜をたどると初代は成重春生(1979年)、2代目は田鎖博美(80〜82年)。そして、3代目として84年の1年だけ、あの江夏豊も着けた。その後は郭泰源(87〜97年)、松坂大輔(99〜2006年、現ソフトバンク)、涌井秀章(09〜13年、現ロッテ)と続き、昨年から多和田に受け継がれた。

 3代目以降は錚々たる投手が背負ってきたが、その中でも西武の「18」を最も長く背負ったのは4代目の郭だ。84年、台湾代表としてロス五輪に出場し、銅メダル獲得に貢献。翌85年、西武入団。当初の背番号は「12」だった。入団1年目、6月4日の日本ハム戦(平和台)でノーヒットノーランを達成。これは西武球団としては初の快挙だった。

 一見、細身だが、裸になると筋肉質。腹筋、背筋が強く、投手としては理想的な体型だった。武器は150キロを超えるストレート。その球質を言い表すなら“手裏剣”。風を切るようにキャッチャーのミットに吸い込まれた。ついた異名は「オリエント・エクスプレス」。当時は球場のスピードガンが珍しい時代だったが、本拠地の西武球場がそれを取りつけたのは郭の入団がきっかけだった。

スライダーよりシュート


 さらに、140キロを超えるスライダーは絶品だった。球離れが遅く、リリースポイントが打者に近いため、攻略は困難だった。ただ、本人が最も自信があったのはシュートだという。

「みんな、スライダー、スライダーって言うけどね。シュートがあったから、スライダーが生きたんじゃないかと思うんです」

 郭が「打席に立つのが嫌だな」と思った唯一の投手だったという、大石大二郎(元近鉄)も「嫌だったのは内角へのシュート。ストレートみたいな速さで内角をえぐられるわけだから、そう簡単に打てる投手ではなかった」と回顧する。

 本人が最も印象深いのは91年のシーズン。背番号を「18」にしてから5年目だった。24試合に登板して、15勝6敗1セーブ、防御率2.59で優勝に貢献し、MVPにも輝いた。

「その年、僕は2位の近鉄に対して強かった。ほとんど負けていないと思う(7勝1敗、防御率0.78)。だから、MVPをもらえたんじゃないかな。そのころは試合で投げるのが楽しくて仕方なかった。技術的にも、精神的にも、最も脂が乗っていたころだった」

 西武で13シーズンを過ごし、通算272試合に投げ、117勝68敗18セーブ、防御率3.16。背番号「18」を背負っている間は、通算103勝をマークした。背番号「18」を背負った投手としては松坂の108勝には及ばないが、西武史上最高の助っ人投手として名を残す。

 多和田は「18」を背負ってまだ2年目。8月25日現在、通算12勝に過ぎないが、一歩でも偉大なる先輩に追いつき、そして追い越せるように右腕を振り続けてもらいたい。

写真=BBM
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