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プロ野球回顧録

いざ連覇へ!重なる広島指揮官の思い

 

前回連覇時、古葉監督の言葉


80年は日本シリーズも制し2年連続日本一にも。中央はシーズンMVPにも輝いた主砲の山本浩二


 鈴木誠也の負傷離脱もあり、やや足が鈍っているが、ゲーム差を考えれば広島の1979、80年以来の連覇は間違いあるまい。8月30日発売の『週刊ベースボール』でも石井琢朗打撃コーチ、赤松真人のインタビューなど、さまざまな角度から広島の今に迫る特集を組んだ。

 その中で前回、連覇を決めた80年と今年の類似を探る企画も入れた。キーワードは「独走」だ。80年は2位・ヤクルトに6.5ゲーム差をつけ、優勝を決めている。

 ただし、決して「楽勝」ではなかった。80年の優勝がほぼ確定した時期に『週刊ベースボール』に掲載された古葉竹識監督のインタビューを抜粋し、紹介する。

◇ ◇ ◇

古葉 正直に言うとね、苦しかったですよ。見た目にはね、数字の上で貯金が30以上もあって、楽な戦いのように見えたかもしれないけど、内側は全然違っていた。勝って当たり前と言われ、前半戦をぐいぐい勝って、他チームを大きくリードした。そこでね、もし逆転でもされたら、それこそ何を言われるか分からない(笑)。勝つことの苦しみは、第三者には分からない。やっぱり苦しかった。

──8月に早々にマジックが出た。しかし、その後、2度ほど消えたときは。

古葉 一番最初出たときは35という気の遠くなるような数字だったからね。だから何とも思わなかったですよ。マジックが1ケタになってついたり消えたりしたら大変だけれども(笑)。

──ケガ人が少なかったのもよかったのでは。

古葉 それでも小さなケガ、故障は多かったよ。しかし、チームとしては発表する必要はないし、ウチの選手は我慢してできるものであればやるからね。生身の体なんだから、どこかやってますよ。問題はその選手が我慢できるかどうかだね。

──なるほど。

古葉 実際ね、故障者は意外と多かったんです。ベンチに置いても使えない選手がいたんです。名前を挙げると、大野(豊)、山本(浩二)ね。大野の場合はシーズン中、2週間ほどボールを投げられない日があった。それでもベンチに入れた。山本にしても腰痛で、満足に打てる状況でないときもあった。それがね、絶対表面化しなかったのは、本人たちがいっさいそういうことを外部に話をしなかったからなんです。なぜ調子が悪いんだ、なぜ、としつこく質問されたら、人間ついしゃべりたくなるもんだけど、彼らはじっと胸の中にしまって言わない。彼らがベンチにいるということは、相手にとっても作戦上において、いろいろ迷うケースも出てくるわけですよ。そういう面で、選手に感謝しています。

◇ ◇ ◇

 戦いに絶対はない。古葉監督の言葉は、どこかいまの緒方孝市監督の心境を代弁しているようにも思える。

 それでも連覇に向け、最終コーナーを曲がったことは間違いない。歓喜のときは、着々と近づいている。

写真=BBM
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