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侍ジャパンU-18戦記

【侍ジャパンU-18戦記(03)】空中戦へ高まる期待

 

現地時間9月1日から始まる「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」。清宮幸太郎を主将とした“高校生ジャパン”がカナダで世界を相手に奮闘を繰り広げる。悲願の世界一へ――。若きサムライたちの戦いを追う。

33スイング中21本がサク越え


打撃練習中、フェンス後方で守る選手たち


 ある選手がこう、つぶやいた。

「石ころだらけだ。危なくてスライディングができない」

 これも国際試合では当たり前の光景である。8月30日、侍ジャパンU-18代表はカナダ・サンダーベイで練習を行った。午前中は試合会場のサブ球場で実戦的なメニューを消化。投手はブルペン入りし、野手はシート打撃などでサインの確認をした。この日の午前中に未到着だった荷物はすべてそろい、予定どおりの練習をこなすことができた。

 午後はメーン会場の「ポートアーサー」に隣接するサブグラウンドへ移動。到着すると、ビックリした。日本の考え方からすれば「硬式野球仕様」ではない。内、外野のネットはなく、内野のフィールド部分も“砂利”のような土質なのである。

 ここでの野手のメーンは打撃練習。前日はバットが届かなかったため、各選手は久しぶりの感触を楽しんでいた。しかし、ここで問題が……。先述のように、外野ネットがない。つまり、サク越えはすべて場外弾となってしまう。加えて両翼90メートルでセンターも110メートル程度で右中間、左中間の膨らみもなく、いくら飛距離が出ない木製とはいえ、本塁打連発が予想された。

 しかも、外野後方は駐車場となっており、センター後方付近には数台が駐車。日本メディアが現地で使うレンタカーも含まれていた。“飛ばし屋”と言えば前日、小枝守監督がクリーンアップに指名した三番・中村奨成、四番・清宮幸太郎、五番・安田尚憲の3人だ。

 フェンス後方では選手だけでなく、チームスタッフも総動員で球拾い要員を配置し、場外弾の処理、そして、打球が車に当たらないように待機させていた。

 清宮が打席に入ると周囲の選手たちが「キヨが来たぞ!!」と情報伝達。鋭い打球を右中間から右翼へ連発し、33スイング中21本がサク越えという驚愕のパワーを披露した。実は周囲からは「中堅は狙うな!!」と駐車車両が集中しているスペースへは打ち込まないように指令が出ていたという。清宮は無理に引っ張っている場面も見られたが、その規格外の飛距離にあらためて驚かされたのであった。ちなみに安田は22スイング中11アーチ、中村は42スイング中11アーチと侍ジャパン自慢の本塁打競演に、感嘆の声が上がっていた。

 いよいよ開幕まであと2日。実戦で練習同様の打撃は難しいだろうが、世界舞台でもこれまでの侍ジャパンにはない“空中戦”への期待が高まってきた。

<次回に続く>

文=岡本朋祐 写真=BBM
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