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【元広島・野村謙二郎に聞く】坂本勇人の優れている点は?

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代に名遊撃手として鳴らした、元広島野村謙二郎氏だ。

Q.昨年、巨人の坂本勇人選手がプロ10年目(ショートのレギュラー定着9年目)にして初めてゴールデン・グラブ賞を獲得しました。それ以前との違いはどこにあるのでしょうか。また、侍ジャパンの正遊撃手でもある坂本選手の、ショートとして優れている点はどのようなところにありますか。(福岡県・49歳)



A.肩の強さとスローイングの安定感が余裕を生む。すべての動きがムダなくリンクしている。


ハンドリングの柔らかさと正確さが坂本の守備で特筆すべき点だ


 坂本勇人選手、昨年がゴールデン・グラブ賞獲得は初めてだったのですね。私もいま初めて知り、ビックリしています。一軍定着9年目ということですが、もっと前に獲得していてもおかしくないくらい、以前からショートの守備はリーグでも指折りだったと私は思っています。ただ、こればかりは時代の巡り合せと言いますか、ほかの球団にも優れたショートがいれば(記者の方の投票なので)獲ることができませんので、仕方がなかった、と言うほかありません。

 坂本選手の優れている点は、何と言っても肩の強さと、スローイングの安定にあるのではないでしょうか。新人のころは、後者のほうに問題があったようですが、経験を重ねるごとに安定感は確実に増してきています。エラーの内訳も、以前はスローイングのミスによるものが多かったように思いますが、現在はそうではないでしょう。

 また、特筆すべきはハンドリングの柔らかさと正確さです。ジャイアンツの東京ドームは、みなさんご存じのように人工芝ですが、天然芝よりも打球のスピードの速いこの本拠地球場で、グラブをしっかりと下から上、下から上に使うことができています。打球が坂本選手の下に到達するころには必ず地面に対してグラブを立てた状態で待っていて、そこから柔らかくすくい上げてスムーズにスローイングへ。この一連の動作は、基本に忠実でアマチュアの選手にも参考になるのではないでしょうか。

 なお、このように落ち着いて捕球態勢に入れるのは、前述したようにスローイングに心配する要素がなく、安定しているからです。スローイングを焦るために捕球にミスが生じることはプロ野球選手でも往々にしてあるのですが、坂本選手はその部分で余裕があるため、誰もが野球を始めたときに習う「捕ってから、投げる」を、高い次元で行えるのです。

 そのほかにも優れた点を挙げるとすれば、ムダな動きがないところでしょうか。打球に対して最短で到達できるのも、彼の特長でしょう。ここで時間をロスすると、捕球姿勢にも遅れが生じますし、結果、スローイングにも悪影響が出る。すべての動きがムダなくリンクしているということですね。

写真=BBM

●野村謙二郎(のむら・けんじろう)
1966年9月19日生まれ。大分県出身。佐伯鶴城高から駒大を経て89年ドラフト1位で広島入団。2005年現役引退。10年〜14年は広島監督。現役生活17年の通算成績は1927試合出場、打率.285、169本塁打、765打点、250盗塁。
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