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【MLB】MLB機構とリトルリーグに共存共栄の価値はあるか!?

 

リトルリーグの試合に合わせてメジャーの試合を組み、選手たちと子どもたちが触れ合うことで、より野球人気を高めていこうと考えているMLB機構


 リトルリーグ・ワールド・シリーズは毎年、ペンシルベニア州サウスウイリアムズポートという山間の小さな町で開催される。当地でリトルリーグが設立されたのは1939年、長い歴史と伝統を誇る。

 2年前に取材に訪れたが、2つの球場を中心に、練習場、宿泊施設、博物館などが並び、風光明媚で聖地と呼ぶにふさわしかった。今年、MLBはその期間中に、MLBリトルリーグクラシックと銘打って、約5マイル離れたBB&Tボールパーク(普段は1Aチームが使用)で、パイレーツ対カージナルスのナイトゲームを開催した。8月20日、収容2600人の小さなスタンドに、参加16チームの子どもたち、家族、チーム関係者が招待された。

 素晴らしいアイデアだと思う。メジャー・リーガーを夢見てプレーする世界の子どもたちがリトルリーグの聖地で、かつて同じ立場だった現メジャー・リーガーと時間を共有する。昼間は、リトルリーグの試合で、メジャー・リーガーがフィールドで子どもたちをねぎらったり、スタンドに座って一緒に観戦したりした。写真を撮り、ボールや帽子にサインをし、野球の質問に答える。MLBはこのアイデアを1年前に思いついたが、BB&Tボールパークは1926年に建てられた、全米でも2番目に古いマイナー球場。そこで数百万ドルを費やし、打撃ケージ、ラウンジ、トレーニングルーム、クラブハウスを修繕、メジャー仕様の球場へとしたのだ。

 選手にとっては、最も疲れがたまる8月に、1試合のためだけに移動させられるのはきつい。そこで比較的近いピッツバーグ(196マイル)とセントルイス(798マイル)のチームが選ばれた。当日ヤディア・モリーナなどスター選手も早く姿を見せ、積極的に子どもたちと交流した。

 ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは「ここに来ている子どもたちが、次の世代の野球を支えるコアになっていく。彼らがこれからも野球に関わってくれるよう、できることはなんでもしたいし、努力に値する」と説明している。

 MLBは選手会と共同で、野球奨学金、アカデミー創設など、次の世代のために3000万ドルを投資している。8月24日、試合のない日を利用して、日本代表、東京北砂リトルのメンバーがピッツバーグのPNCパークにやってきた。ドジャースが来ていたからだ。前田健太投手は翌日のロサンゼルスでの登板を控え、先に移動していたが、ダルビッシュ有投手が残っていて、約20分間球場内で面会している。

 ボールにサインをもらった宮原慶太郎主将は「体の大きさにすごくびっくりして迫力がありました」と興奮気味。ヤスマニ・グランダル捕手のサイン入りレガースに加え、帽子にサインを貰った新井晟也(せいや)捕手も「最初は緊張していたんですけど、フレンドリーに優しく話しかけてくれてよかったです」と目を輝かせた。

 ダルビッシュもかつては全羽曳野ボーイズでプレーした。子どもたちは言うまでもないが、彼にとっても良い時間だったのではないか。

 コミッショナーはリトルリーグクラシックを恒例イベントとする意向だ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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