2016年夏はエース・四番で茨城大会決勝まで勝ち進んだ。フルスイングは高校時代から変わっていない
豪快な一振りで横浜スタジアムのバックスクリーンに叩きこんだ。10月3日の
中日戦(横浜)、五番・右翼でプロ初出場を果たした
DeNAのドラフト5位ルーキー・
細川成也(明秀日立高)が、初回の初打席で3ランを放つ衝撃のデビューを飾った。高卒ルーキーの初打席アーチは球団史上初、プロ野球でも6人目の快挙だった。
「真っすぐのタイミングでフルスイングしようと決めていました。感触は良かったですが、『いってくれー!!』と、思いながら走りました」と初アーチを初々しい笑顔で振り返った。打撃の才能は早くから
ラミレス監督の目に留まり、春季キャンプでは「
カブレラ(元
西武)のようになれる」と指揮官がベタ褒めした期待の若手だ。
細川を高校時代に育てたのが茨城・明秀日立高の金沢成奉監督。かつて青森・光星学院高(現八戸学院光星高)を率いて、春夏8度の甲子園出場の経験を持ち、
坂本勇人(
巨人)、
北條史也(
阪神)、
田村龍弘(
ロッテ)らを育てたことでも知られている。
若きスラッガーの魅力はなんといってもスイングスピードの速さにある。金沢監督の熱心な指導の下、高校通算63本塁打をマーク。しかし、昨秋のドラフト指名直後、恩師は教え子がプロの世界でしっかりと成長していけるか気にかけていた。「器用な子じゃないんです。時間がかかる」と言い、さらにプロで活躍する選手の条件に「自分をしっかり持っていること」とも語った。
プロでは監督、打撃コーチをはじめさまざまなアドバイスが送られ、ときに各方面からまったく異なる指導を受けることもある。それらを取捨選択して自分の技術を磨いていかなければならない。そうした状況に惑わされることなく、自分を貫くこともプロで結果を残す要素だと金沢監督は考える。
「高校3年間、しっかりとバットを振らせてきた。極論すれば三振か、ホームランか、というスイングです。プロでこぢんまりとしてしまうと、彼の良さは出ない」
ルーキーイヤーの今季、細川はずっと二軍で過ごしてきた。チーム2位の10本塁打を放つ一方で、三振はファーム最多となる182個を記録。決して褒められた数字ではないが、こぢんまりするどころか、空振りを恐れていないことは確かだ。
一軍デビューを飾った試合後のヒーローインタビューで長所を聞かれた細川は「持ち味はフルスイングなので、それを心掛けてこれからも頑張っていきたい」と初々しく答えた。今のところ恩師の心配は、杞憂に終わっているようだ。
文=滝川和臣 写真=高原由佳