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吉川尚輝、巨人を照らす明るい光

 

10月3日、神宮球場でのヤクルト戦でプロ初安打を含む3安打猛打賞と来季に向けて明るい話題を提供した巨人吉川尚輝


 上半身のコンディション不良による出遅れがなんとも悔やまれる。巨人のドラフト1位ルーキー・吉川尚輝のことだ。

 10月3日、巨人のシーズン最終戦となったヤクルト戦(神宮)で、5月17日以来となる先発出場(プロ入り2度目)。二番(二塁)に座ると、初回に左翼へのプロ入り初安打で勢いに乗った。3回の第2打席では右前打で出塁すると「モーションが大きかったので、思い切っていけました」とすかさず二盗に成功。5回の第3打席でも右前打を放ち、初の猛打賞と、高橋由伸監督が「軽快な動きで、来年に楽しみなバッターだと思う」と絶賛するのも当然のパフォーマンスを披露した。

 9回には犠打も決めて二番のお仕事もきっちり。このあたりはルーキーイヤーの大半を二軍で過ごした成果といえそうだ。

 もともと中京学院大、そして侍ジャパン大学代表での活躍もあり、レギュラーの定まっていなかった二塁(本職は遊撃手)で開幕先発デビューを期待する声もあったほど、周囲の評価は高かった。広島菊池涼介の大学の後輩にあたり、似たプレースタイルから“菊池二世”と呼ばれることも。しかし、新人合同自主トレ中に上半身の異変を訴えると、春季キャンプは三軍スタートとなり、二軍昇格は3月に入ってからと、期待を裏切る出遅れとなってしまった。

 5月には一軍昇格で3試合の出場もあったが、これは顔みせ程度のもので、そもそもチーム状態が下降線をたどっていた一軍(その後、球団ワーストの13連敗あり)にルーキーを起用しながら育てる余裕もなかったと考えられる。スタートからスムーズに入れていれば、結果は異なっていた可能性もあるが、結局新人年は二軍が主戦場。本人も思い描いていた1年目のビジョンとは異なる1年となっただろうが、二軍でじっくりとプロのレベルに順応できたことは、これから先のキャリアを考えれば、決してムダな時間ではなかっただろう。

 このヤクルト戦は2年目の捕手・宇佐見真吾が今季4号アーチ、同じく2年目の山本泰寛が9回に決勝のグランドスラムを放つなど、同年代の選手たちの活躍が目立ったが、すでに順位の確定した消化ゲームとはいえ、若手の伸び悩みが課題とされたシーズンの最終戦で、V奪回を目指す来季に向けてポジティブな話題が満載だった。

 そのなかでも吉川尚の見せたパフォーマンスは、仁志敏久以降、生え抜きの二塁手を育てられないでいる巨人にとって、明るい光といえるのではないだろうか。

文=坂本 匠 写真=大賀好章
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