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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

楽天・高梨雄平 大谷と対戦する最後の投手となっても

 

クライマックスシリーズでも中継ぎ陣の切り札として期待が大きい高梨


「期待を裏切ってすみません」

 茶目っ気たっぷりに楽天高梨雄平は笑った。

「みんな大谷(翔平)君の満塁ホームランが見たかったんだと思いますけど……」

 10月9日の日本ハム戦(Koboパーク宮城)で高梨が投げたスライダーは、多くのファンの脳裏に焼き付けられただろう。1対2で迎えた7回一死満塁のピンチでマウンドに上がった。

「満塁でのリリーフは久しぶりでした。(川越東)高校以来じゃないですかね?」

 だが、緊張はなかった。一人目の石井一成に初球を中前に運ばれ1点を献上するが、続く大谷を迎えても自分の仕事に集中していた。メジャー挑戦が濃厚となっている大谷にとって、日本での最後の試合。球場のファンはこの日ノーヒットだった大谷のバットに注目していた。

「満塁でツースリー。開き直るしかないので」

 左のサイドスローから放たれたスライダーに、大谷は大きく腰を引き見逃し三振。三振を狙いにいったわけではないが、自信はあった。

「直前(ファウルしたスライダー)のスイングを見て、スライダーだなと思いました」

 JX-ENEOS時代は打撃投手やビデオ撮影なども経験した苦労人。今季も敗戦処理や二軍降格も経験し、「あっという間の1年」は決して平坦な道のりではなかった。ただ、ドラフト9位だ。今年が大事な1年になることは入団前から分かっていた。そんな中での46試合。「こんなに投げたのは久しぶり過ぎます」と充実感をにじませる。

「(大谷の)最後の投手になるかな、とは思っていた」と高梨。とはいえ球場の雰囲気は何も感じなかったと振り返る。「雰囲気にのまれないように、ということをトレーニングしてきた」とシーズン序盤に見られた課題を克服し、成長した姿を見せつけた。

 どん底を知るからこそ、結果を出さなければ生き残れない世界での、1球の重みも知っている。ルーキーながら勝利の方程式に堂々と名を連ね、クライマックスシリーズでも大事な場面を任されるだろう。だが、どんな状況で何が起ころうと、高梨はもう、揺るがない。人生がかかったその1球に集中している。

文=阿部ちはる 写真=BBM
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