約50年のときを越え、バッキー(写真左)の持つ5度の2ケタ勝利記録を抜いたメッセンジャー(右)。2人は現在、SNSでつながり友好を深めている
5度目の2ケタ勝利を挙げる前あたりから、
阪神のメッセンジャーはある伝説の外国人投手の数字を追いかけるようになった。それは1960年代、
村山実とともに先発の中心投手として活躍した
ジーン・バッキーだ。
「妻とジーン(バッキー)がSNSでつながっているんだ」という話をメッセンジャーから聞いたことがあった。今年80歳を迎えたバッキーがSNSをしているとは少し驚きだが、バッキーとメッセンジャーの家族が阪神を通じてつながっていることは野球の歴史を感じさせる話だった。
先日、取材中にその話になり最近、何かバッキーと交流があったかを聞いてみた。
「つい最近だけどね、ジーンと妻と3人で、電話で話したんだ。約2時間もいろいろなことを話したよ。世間話ばかりだったけど、楽しい時間だったよ」
今年、メッセンジャーは阪神の外国人投手としてバッキーを抜く6度目の2ケタ勝利を挙げた。彼の中にはバッキーの記録を抜きたいという強い思いがあっただけに、これは誇りに思っている部分だと言う。
「ジーンに、あなたの記録を抜いたよ。ごめんなさいね、2位になって、と伝えたんだ」
それに対しバッキーは「僕は君(メッセンジャー)が大好きだし、君たちの家族が大好きだ。だから記録を作ってくれてうれしく思っている」と答えたという。
「これまで阪神では多くの外国人選手がプレーしたけど、その中で外国人の記録を作れたことは誇りに思う。それにレジェンドである彼とつながっていることはうれしいし、すごく誇りに思っている」とメッセンジャー。
バッキーは1964年に沢村賞(29勝9敗)を獲得し、チームをリーグ優勝に導いた。メッセンジャーが次に目指す場所はこの2つだ。そしてバッキーがなしえなかった日本シリーズ制覇に向け、ケガを完治させ今日から始まるクライマックスシリーズで思い切り腕を振っていく。
メッセンジャーの6度の2ケタ勝利の記録を超える阪神の外国人投手がいつの日か現れたとき、その投手とメッセンジャーがつながると、阪神の歴史はさらに濃いものになる。その問いに「そのとおりだね、楽しみにしたいね」とメッセンジャーはニコリと笑った。
文=椎屋博幸 写真=早浪章弘、BBM