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“魔術師”バレンタイン監督の人心掌握術

 

ロッテにさまざまな変化をもたらしたバレンタイン監督


 青年監督はいかにしてチームを変革するのだろうか。

 今季、パ・リーグの最下位に沈んだロッテ。5年間指揮を執った伊東勤監督が今季限りで退任し、注目された後任には、21年間の現役生活に幕を下ろしたばかりの井口資仁が就任することとなった。

 10月14日、千葉市内のホテルで就任会見を行った井口監督は「すべてメジャーがいいわけではない。日本のいいところもある。両方のいいところを自分の色として出していきたい」と抱負を語った。メジャー・リーグでプレーした日本人監督は球界初。培ってきた幅広い視野を生かしたチーム再建への期待が高まっている。

 これまで、最も長くロッテの指揮官を務めたのは1973〜78、90、91年の計8年間の金田正一監督。続く歴代2位が、7年間(95、2004〜09年)のバレンタイン監督だ。アメリカから日本にやってきたバレンタイン監督は、当時のチームに少なくない影響を与えた。

 04年以降の第二次バレンタイン政権で、監督付き通訳を務めていた中曽根俊氏はこう振り返る。「勝つ意識を植え付けるというよりは、『まずは楽しもうぜ』というところから入りました。『そもそも野球を好きだからやっているんだろ? じゃあ、楽しもう』というように」。

 バレンタイン監督はミーティングだけでなく、グラウンド上でも時間があれば選手に話しかけた。打撃練習のローテーションでスイングしていない野手や、ときにはブルペンで投球中の投手にも。春季キャンプでは、少し目を離してしまうとどこかに行ってしまって姿が見えなくなるほどアクティブに、常に選手との距離を近くすることを心がけていた。

 そして、決して欠かさなかったのが、誕生日を迎えた選手への声掛けだった。指揮官の細やかな配慮に次第に一体感を深めたチームは、05年に31年ぶりのリーグ優勝を達成。さらに日本一に上り詰めた。

 バレンタイン監督のやり方が常に通用するわけではないだろう。だが、09年には選手として手法を学んだ井口監督が、そこから吸収したエッセンスもあるはずだ。

 チーム改革の重責を託された井口監督の手腕に注目したい。

文=吉見淳司 写真=BBM
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