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「将来性」か「即戦力」か。2017ドラフト見どころチェック

 

将来性なら高校“BIG3”


9月22日に記者会見を開き、プロ志望を表明した清宮


 この道、30年以上のベテランNPBスカウトに2017年のドラフト傾向を聞くと「正直、今年は難しいんです。1位指名12人は一体、誰になるのか……。球団の方針によって大きく変わってくるのでは……」と語った。補強ポイントは、大きく2つに分かれると言っていいだろう。

 まずは「将来性」を最優先とした高校生野手の獲得である。9月22日に「2017年の目玉」と言われる早実・清宮幸太郎が「プロ志望」を表明した。大学進学も選択肢としてあっただけに、大物の決断はNPB関係者にとっても“一安心”と言える。

 主な高校生で歴代最多とされる111本塁打を放ったスラッガーは、複数球団の第1回入札での1位重複が確実だ。侍ジャパンU-18代表では国内合宿で2本、カナダでの「第28回WBSC U-18ワールドカップ」でも2本塁打を積み上げ、木製バットの対応もまったく問題ない。清宮は高い技術以外にも、集客面においても期待できる。今夏の西東京大会決勝(対東海大菅生高)では、史上初めて満員札止め(3万人)の観衆を集めた。話は早いが、チケットだけでなく、グッズ販売においても莫大な影響力がありそうだ。

 清宮がプロ志望を表明したことで「高校BIG3」が俄然、注目を浴びることとなる。今夏の地方大会、甲子園開幕前の段階では「清宮1強」の情勢だったが、広陵高・中村奨成の“大ブレーク”で、ドラフト戦線は活発な動きを見せている。

 中村は準優勝を遂げた今夏の甲子園で1985年、PL学園高・清原和博(元西武ほか)がマークした大会5本塁打を6本に更新するなど、数々の大会記録を樹立。銅メダルに輝いた侍ジャパンU-18代表では木製バットの対応に苦しみ、25打数3安打と精彩を欠いた。だが、「早めに壁にぶつかって良かった」と努めて前向きにとらえており、今後の練習に生かしていく構え。順応するための時間はたくさんあり、「打てる捕手」への人気は高まりそうである。

 清宮、中村とともに、世界一を目指したカナダ・サンダーベイでの国際大会で脚光を浴びたのが履正社高・安田尚憲である。今春のセンバツでは準優勝も、夏は宿敵・大阪桐蔭高との準決勝で惜敗。侍ジャパンU-18代表では、国内合宿の練習試合で3戦3発と、木製バットで「一発回答」。視察に訪れていたNPBスカウトは、夏からの成長を確認し、この時点で「上位評価」を決めたと言っていい。本大会では待望の本塁打こそ出なかったものの、打率.324、5打点と結果を残し、安田自身も自信を深めた海外遠征となった。清宮がプロ志望届の提出を決めたことで、「BIG3」がドラフトの主役を張る可能性は十分である。

即戦力の大学、社会人に魅力ある投手が台頭


即戦力という観点では田嶋(JR東日本)は実績十分。注目の即戦力サウスポーだ


 高校生の「将来性」ではなく、2018年の開幕からの「即戦力」を求めるのならば、社会人投手に目を向けるべきだ。特に「高卒3年目」の2人が、健在ぶりを発揮している。JR東日本・田嶋大樹は左腕で最速152キロと、社会人3年で「勝てる投手」に成長した。今夏の都市対抗では伏木海陸運送との1回戦、三菱重工名古屋との2回戦で、ともにシャットアウトと圧巻の投球。先発3連投となった東芝との準々決勝で涙をのんだものの、9回途中まで投げる姿はエースそのものだった。

 佐野日大高では3年春のセンバツで4強。高校時点でプロ志望届を提出すれば「上位候補」と言われていたが、3年を経て「1位確実」となった。高校生ではなく、田嶋で「一本釣りしたい」球団は当然あるはずだが、ここが腹の探り合い。フタを空けてみれば、第1回入札で競合する可能性も十分にある。

 田嶋が「先発完投型」ならば、「抑え」としてのポテンシャルを高く評価されているのがヤマハ・鈴木博志である。最速157キロを誇り、ガンガン力で押していくタイプは見ていて気持ち良い。昨年、今年と都市対抗でも実績を残しており、大舞台での強心臓ぶりもプラスポイントだ。

 社会人の大卒2年目ではNTT東日本・西村天裕、日立製作所・鈴木康平、日本新薬・西川大地なども総合力の高さで勝負していける素材だ。

 大学生では立命大の左腕・東克樹の評価が急上昇している。今夏は日米大学選手権(アメリカ開催)で最優秀投手賞を受賞すると、ユニバーシアード(台湾)でも2大会連続での金メダル獲得に貢献。国際舞台での結果はイコール、即戦力とも言われており、1位候補に浮上しそうだ。東は170センチと小柄ではあるが、マウンドの躍動感は身長を感じさせない。

 また、侍ジャパン大学代表では守護神だった明大の左腕・齊藤大将もラストシーズンの今秋に猛アピール。早大との開幕戦で4年秋にしてリーグ戦初完封と、先発としての適性も見せ“上り調子”である。東大史上6人目のプロ野球選手を目指す150キロ左腕・宮台康平は「プロ一本」。今秋の初先発となった慶大1回戦では通算5勝目を挙げ、左肩痛から完全復活を遂げた。昨年11月から取り組んできた新フォームも手応え十分。貴重な左腕は、ドラフト当日に注目を集めそうだ。

写真=BBM
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