2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えているが、今回から1日に1冊ずつバックナンバーを紹介していこう。いつまで連載が続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 古今東西の強打者をさまざまな角度から検証
表紙は長嶋。1人で表紙の第1号でもある
今回は『1958年4月30日増大号』。創刊第3号にして、早くも増大号だ。定価は特価40円でカラーページはない。
巻頭からの大特集は
巨人─国鉄(現
ヤクルト)の開幕戦だ。最初のグラビアページ(写真がきれいに出るように、つやのある紙を使ったページ)は、巨人・
水原円裕監督の渋い顔と「巨人いかに」と見出し。リーグ3連覇中の巨人は、この年、開幕から国鉄に3連敗、大洋初戦にも黒星で4連敗スタートとなった。
その中でメーンとなっているのは、4月5日、後楽園の開幕戦。国鉄の左腕エース・
金田正一、巨人の新人・
長嶋茂雄の戦いだ。
週ベの記者たちは、開幕当日だけでなく、前日4日の両雄にも密着し、事細かく記事にしている。結果は、紙がざら紙となった本文の見出しを追っていけば分かる。
扉のメーンタイトルは「金田・長嶋の対決」。開いていくと「球場は人のなみ……」(セ、パの各開幕戦の入場者数などの記事)、「金田宅を訪れた長嶋」(前日の密着)、「刻一刻、対決は迫る」(当日の朝から試合開始まで)、「長嶋のバットに快音出ず」(試合の模様)、「プロ野球の勝利」(解説者たちの声)と続いていく。
この日、長嶋は金田の前に4打席連続三振を喫したが、周囲の評価は、それが「プロ野球の勝利」だったのである。いわば長い歴史と人気を誇る東京六大学とプロ野球の代理戦争とも言えた。
その後、『10分間インタビュー』の西鉄・
稲尾和久、金田をはさみ、長嶋と南海に入団した立大同期の
杉浦忠の対談ページを掲載。長嶋は4打席連続三振について以下のように振り返っている。
「カーブでもストレートでも同じですよ。とにかくボールにかすらないんだもの。チップ1つですからね。あとみんな空を切って……おかしいね、あれ」
センターのグラビア連載『プロ野球の顏』は、巨人・
広岡達朗が「エレ
ガントな遊撃手」として紹介され、ほかの開幕カードも入っている。
後ろのモノクログラビアはセンバツ甲子園の決算だが、最終ページでは準々決勝で敗れてはいるものの、大会の大きな話題だった早実の3年生投手・
王貞治が紹介され、「力投むなし王投手」とある。主役たちは、最初から主役だったのだ。
<次回に続く>
写真=BBM