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【MLB】カブス・マドン監督の抗議でコリジョンルール論争再び?

 

ナ・リーグ優勝決定シリーズの一戦でコリジョンルールの判定を不服として猛抗議するマドン監督(左)。オフにMLBのトーリ氏と話し合うと言うが、ルールは改良されるだろうか


 2015年に導入された本塁のコリジョンルール。16年の併殺崩しの危険なスライディング取り締まりルール。MLBでは定着したかと思いきや、現場のご意見番、カブスのジョー・マドン監督が罰金覚悟で異を唱えた。

 現地時間10月14日、ナ・リーグ優勝決定シリーズのカブス対ドジャース第1戦。7回裏、ドジャース4対2、一死一、二塁。ジャスティン・ターナーの左前安打で二塁走者チャーリー・カルバーソンが本塁突入。左翼手の好返球でアウトとなったが、ドジャースがリプレーを要求。ボールを持っていない捕手は、得点しようとする走者の走路をブロックしてはならないという「ルール7・13」違反。ビデオで見ると、確かにウイルソン・コントレラス捕手はボールをキャッチする一瞬前に左足を出し、ベースをブロックしていた。これにより、判定が覆り、マドン監督は猛抗議で、退場処分となっている。

 試合後の会見はほとんどがその話題になった。マドン監督は「野球ならではの素晴らしいプレーだった。左翼手の打球処理と返球もよく、捕手の技術も100パーセントだった。ブロックに行ったのではなく、返球がファウルラインの方向に来たから、ああなっただけ。捕手の立場で想像してみればいい。体をスライドしていって、倒れないためには左足を出さないとバランスは保てない」と語った。

 監督の主張は間違いではない。だがルールは変わった。「私はこのルールができた当初から反対だ。野球をプレーしてきた者なら100パーセント同意するだろう。意図的に他者をケガさせようとしたのではない」。リプレー判定に抗議できないことも当然マドン監督は知っている。退場覚悟の上だった。「時に主張しないといけない。100パーセント同意できないものに我慢して、ダグアウトで座っているわけにはいかない。私は現場の総意として発言している」。

 ちなみに公式会見でのこのようなルール批判も罰金対象になる。マドン監督はそれも覚悟していた。興味深いのは今季公式戦中、同じようなケースでは一度も判定が覆っていなかったことだ。敵であっても味方であっても、あるいはルールの管理者であっても、100年を超える野球の歴史の中で、賛美されてきた偉大なプレーを帳消しにしたくはない。

 しかしながら、ひとつのアウトの価値がとてつもなく大きいプレーオフとなると話は別だ。リプレーを要求したドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「レフトの返球も、捕手の動きも素晴らしかった。しかしルールはあの捕手の動きを違反としている。クリアでシンプル」と説明した。ちなみにカブスの地区シリーズで、ジョン・ジェイ選手が、併殺崩しに二塁手に厳しいスライディングをしたところ、対戦相手のナショナルズがリプレーを求めた。

 判定は覆らなかったが、マドン監督は「あのプレーもそう。野球の正しい、良いプレーなのに」とリプレー要求に憤っている。理由は敬意を払うべき、自己犠牲のプレーだからだ。
 
 マドン監督はMLB機構のチーフベースボールオフィサーのジョー・トーリと話すと言った。現場の総意として、彼の信じてきた野球観をぶつける。果たして、MLBがルールに再び改良を加えることはありうるのか。今後の推移が気になる。
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