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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

野球人生の交差路「ドラフト会議」にまつわるこぼれ話

 

ドラフト開始2時間30分前に撮影された中部学院大の会見場。そのときは中央にまだ「3人」の席が用意されていたが……


 大きな話題を集めたドラフト会議から1週間以上が経ったが、今年も全国で悲喜こもごもの人間ドラマが生まれた。

 掲載した写真は、岐阜にある中部学院大の記者会見場のもの。ドラフト2時間30分前にテストで撮ったものだが、左に野球部部長、右に監督、真ん中には「3人」が座る席の準備が進められていた。

 今年の同大学からのドラフト候補は平岡敬人投手、内海大寿外野手、西居建陽投手。果たして3人全員の指名となるのか、それとも……。会議が始まるまでの空き時間、記者の控え室で3人の経歴などの最終チェックをしていると学校関係者の方から、たびたび「何位ぐらいですか?」「3人行けますかね……?」といった質問を受けた。その都度、記者は答えに困ってしまうのだが、本当にこればっかりは私たちにも分からない。

 もちろんこの日のために1年間取材を続け、指名の可能性があるから現場に来ているのだが、過去には指名漏れもあれば、逆に下位指名候補が上位で名前が呼ばれるサプライズの瞬間にも何度も立ち会ってきた。それがドラフト会議である。

 結論を書けば、取材に訪れた中部学院大からは平岡敬人(広島6位指名)1人だけであった。ほかの2人は無情にも指名なし……。今回のような複数の候補選手がいる場合、状況によっては現場はなんとも言えない微妙な空気に包まれる(この日がまさにそれだった)。

 その一方で逆のパターンもある。ドラフト当日は編集部も全国各地にカメラマンと記者を総動員して送り込んでいるが、それでも予想だにしない指名で編集部が大慌てになることはある。近年では2011年秋のドラフト会議で日本ハムが7位で早大ソフトボール部の大嶋匠捕手を指名したときだろうか。

 私は別の候補選手の取材に行っていたのだが、編集部で陣頭指揮をするデスクからの電話で急遽、大嶋のほうへ行ってくれと連絡が入り、電車とタクシーを乗り継いで車中で「大嶋? ソフトボール部なの?」と大慌てで早大のほうに駆け付けたことがある。それもいまとなっては良い思い出であり、私の中では強烈に印象に残ったドラフトであった。

 指名する側、指名される側、それを取材する側──。今年も多くの人間模様が垣間見れたドラフト会議。1年に1度だけ訪れる野球人生の交差路とも言える「運命の1日」は、いつも趣が深い。

文=松井進作 写真=BBM
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