2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 一塁ベースを踏み忘れアウトになった長嶋の話
今回は『1958年10月15日号』。創刊第27号で定価30円。中カラー見開きは『ゴールデン・ボーイ』と題し、巨人・長嶋茂雄、同じく巨人入団が決まった早実・
王貞治、さらに近所の少年たちのビッグショット。どうやら長嶋の下宿に王が表敬訪問した際の写真らしい。『週べ』におけるONそろい踏みショット第1号である。
中カラーにも時代を感じる
巻頭グラビアは『巨人4連覇の色濃い』。その中で面白い写真があった。打席の
川上哲治がびっくりし、その脇で、長嶋が悔しそうな顔をしている写真だ。一死三塁、フルカウントの場面で長嶋がなんとホームスチール。対して川上はファウルした。おそらく長嶋単独の判断、川上にしては「ワシのバットが信じられないのか!」と怒りのファウルではなかったか。
本文巻頭は『水原に与えられた最後のチャンス〜日本シリーズにおける巨人の立場』。リーグ4連覇を目前とした巨人・
水原円裕監督の記事としては物騒だ。
三原脩監督率いる西鉄に、日本シリーズで2年連続敗退となったこともあり、「3年連続日本一に届かぬならやめるはず」の声が多かったのだ。それだけフロント、特に品川主計球団社長との確執が深かったこともある。
ただ、この記事の次にあった連載『私の意見』で、その品川社長が登場しているのもすごい(記事は水原監督とは関係ないものだが)。
対談はパの覇者を争う南海・
野村克也と西鉄・
豊田泰光。ともに引退後は辛口の評論家となった男たちだ。さらに30勝を挙げたばかりの西鉄のエースを特集した『スーパーマン
稲尾和久〜三度目の優勝を狙う鉄腕』も5ページ。9月24日時点で首位・南海と2位・西鉄の差は1.5ゲーム。かなり熾烈になっていた。
『スタンドの話題 ペナントレース珍プレー集〜なにが彼らをそうさせたか』では、9月19日の
広島戦(後楽園)でホームランを放ちながら、一塁ベースを踏み忘れアウトになった長嶋の話が出ている(打っていたら28号)。
長嶋の言葉を引用しよう。
「あのときの当たりは僕にしてみれば会心だったものです。打球はショートの頭上を抜いて外野へ。それもフェンスに当たる程度と思っていたので二塁打なら三塁打にしてやろうと全力で走りました。ホームランとわかったのは二塁の前、三間(約5.5メートル)ぐらいのところでした。はじめからホームランとわかっていれば、ゆっくりと塁を踏んでいきましたが……。あれはぼくのミスでした」
『ニュース・ストーリー 暗躍するカケヤの生態〜大組織を持つ関西カケヤに大手入れ』という記事もあった。これによれば、関西六大学の秋季大会が行われた森ノ宮(日生)球場に警察の手入れが入り、野球賭博の胴元、客ら35人が一斉に検挙されたという。
関西大学リーグでなぜと思うかもしれないが、実際の賭けは目の前の試合ではなく、プロ野球と高校野球。要は野球好きが集まり、失礼ながら空席が多く、
大勢が集まれる大学野球の球場が一番便利だったということらしい。彼らは縁起を担ぎ、顔パスや招待券ではなく、必ずチケットを購入しているともあった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM