2016年11月28日、高校の室内練習場でポーズを取る細川成也。現在は「ハマのカブレラ」のニックネームで親しまれるが、入団前は「茨城の中田翔」の異名をとっていた
ちょうど1年前の11月28日。茨城県の高萩市にある明秀日立高のグラウンドを訪れた。その秋のドラフトで
DeNAから5位指名を受けた細川成也を取材するためだった。
かつて光星学院高(現八戸学院光星高)でも指揮を執った金沢成奉監督は「飛距離は高校時代の
坂本勇人(
巨人)とは比べものにならない」と教え子の持つポテンシャルに自信を寄せる一方で、「器用な子じゃないんです。時間がかかる」とプロで才能を伸ばしていけるかどうかを心配していた。
当の本人はクルマの運転免許取得のため教習所に通いながら、残り少ない高校生活でプロ入団に向けトレーニングに明け暮れている時期だった。あれから1年。細川はプロの荒波にもまれながら、確かな一歩を踏み出している。
二軍では従来のイースタン・リーグ記録を大幅に更新する182三振を記録するも将来性を買われ10月に一軍に昇格。デビュー戦(10月3日の
中日戦=横浜)の初打席でスコアボード直撃弾を放つ衝撃的なデビューを果たすと、翌日には早くも2号本塁打が飛び出し注目を集めた。
ポストシーズンでもベンチに入り、CSでは適時打、日本シリーズの大舞台でも2安打を放った。そして現在は台湾で行われているウインター・リーグに参戦中だ。
台湾へ出発前、NPB AWARDS 2017に出席した細川は「CS、日本シリーズはたくさんお客さんも入っていたし、シーズン中とは雰囲気が違いました」と激動のルーキーイヤーを振り返った。懸念された打撃に関しては、「1年目はまず自分の好きなようにやって、その結果を見て来年修正していこうと言っていただいた」と球団の指導方針がルーキーの成長を促した。
と同時に、「一軍に上がってからは小川(博文)コーチと右肩が下がるクセの修正に取り組みました」と周囲のアドバイスも的確に吸収し、一つひとつ階段を上っていた。
そんな若者のことをチームメートたちも気にかけている。「豪快に振っているのに柔らかかったりする。魅力的っすよね」と語るのは、今季、首位打者のタイトルを獲得した先輩・
宮崎敏郎だ。
たった1年間で大きく成長した細川。来季も同じスピードで進化を続ければ、ベイスターズの看板選手としてクリーンアップに座る日もそう遠くはないだろう。
文=滝川和臣