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【大学野球】福澤諭吉の教え「独立自尊」が脈々と受け継がれる慶大野球部

 

今秋、リーグ戦を7季ぶりに制した慶大は12月17日、2017年の練習納めを行った(18年の中心選手となる写真左から佐藤投手、河合主将、柳町外野手)


 学生野球は毎年、チームが変わる。慶大は歴代3位の21本塁打を放った四番・岩見雅紀楽天、4年・比叡山高)、2017年秋の首位打者・清水翔太(4年・桐蔭学園高)など、最上級生のレギュラー野手が5人卒業した。左翼手だった岩見を除く4人は内野手(一塁、二塁、三塁、遊撃)であり、18年で就任4年目を迎える大久保秀昭監督も「内野手の層が薄いのは否めない」と頭を抱える。

 そこで、コンバート案が浮上している。2年秋までに通算57安打を放っている柳町達(2年・慶應義塾高)を中堅手から内野手に挑戦させている。高校時代は三塁手を守ったが、大学では外野手に専念。新チームの外野手には俊足巧打の主将・河合大樹(3年・関西学院高)など候補者が複数おり、チーム事情を考えれば、柳町が内野の一角に入るのが最適と言える。

「三塁だけでなく、二塁もやってくれればありがたいが、本当はショートがいい。そうすれば、ドラフト1位候補になる。ただ、外野の守備も捨てがたい。ヒットメーカーとして打撃に影響が出るのも良くない。内野に順応できるのか、一流の外野手を目指していくのか、判断していかないといけない」(大久保監督)

 柳町は「与えられたポジションをこなす」と意欲的で、現在は高校時代に使用した内野用グラブを使っており、18年に向けては新グラブを発注する予定だという。12月上旬には大学日本代表候補強化合宿(愛媛・松山)に初招集された。

「自分はまだ、日本代表のレベルに達していないと感じた。今までやってきたことは間違いではないですが、もう少し、別の角度から強化していかないといけない部分も学んだ。良い刺激でした」

 攻撃面でも「チャンスで打てるバッターになりたい」と、上級生としての責任感も増している。

 一方、バッテリーは盤石だ。今秋、優勝に貢献した投手陣は全員が3年生以下で、リードする正捕手・郡司裕也(2年・仙台育英高)も健在である。唯一の不安材料は今秋、最優秀防御率を受賞した佐藤宏樹(1年・大館鳳鳴高)の回復具合だ。先発、救援で3勝を挙げたリーグ戦以降、左ヒジの疲労蓄積と軽い炎症のためノースロー。明治神宮大会でも登板機会なく、チームは初戦(2回戦)敗退を喫した。

 目の前の勝利よりも、将来を優先させた大久保監督の決断は正しかった。佐藤も「悪い報告は早く、と言われているので。隠して良いことはない。幸い、回復も早く、良かったと思います」と前を向く。年明けから徐々にキャッチボールを始め、3月の沖縄キャンプを経て、4月のリーグ戦開幕に照準を合わせる「スロー調整」が容認されている。佐藤以外にも今秋、3勝を挙げた関根智輝(1年・城東高)を筆頭に「ベンチ入り候補は10人前後いる」と、大久保監督は手応えを語っており、高いレベルでの競争が繰り広げられる。


 12月17日に年内の全体練習を終えた慶大は長期オフに入る。ほとんどの大学は来年1月に始動するが、慶大は2月5日に設定しており、1月末まで大学の試験が最優先となる。学業をすべて終えてから、野球に専念するスタイルは今も昔も変わらない。もちろん、ずっと体を休めているわけではなく「2.5」に動けなければ、メンバー入りが遠のいてしまう。ある意味、高いレベルの自覚が求められる厳しい世界なのである。1888年創部の野球部には、慶應義塾の創設者・福澤諭吉の教えである「独立自尊」が脈々と受け継がれている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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