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【MLB】国際マーケット違反に対し、さらなる取り締まり強化へ

 

大谷のポスティングシステム入札前に、各球団にしっかりとクギを指したマンフレッド・コミッショナー。獲得後も調査段階での不正まで調査するという厳しい姿勢を見せている


 12月1日、電話によるオーナー会議で新しいポスティングルールが可決、承認されたとき、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはオーナーたちに「国際選手の契約についてはルールを厳守するように。もしルールを破ってでも何かしようと考えているなら、今すぐあきらめたほうがいい。われわれは厳しく調査し、違反を見つけ出したら契約は無効にする」と言い渡した。

 言うまでもない、大谷翔平争奪戦のことであった。それ以前にタンパリングと疑われるようなことをしていたチームは肝を冷やしたに違いない。大谷と合意できたとしても、この1、2年間、何があったか徹底的に調べられる(今後エンゼルスは調査される)。全球団が彼の言葉を深刻に受けとめたのは、2カ月前このコラムで書いたジョン・コッポレラ元ブレーブスGMが、11月21日に国際選手との契約違反行為で永久追放という極めて重い処分を受けたからだ。

 永久追放は過去にはピート・ローズ、シューレス・ジョー・ジャクソンといった八百長に絡んだ人物に科せられた。八百長は薬物違反より遥かに重い、最悪の罪である。コッポレラは八百長とは一切関係はないし、キックバックをもらって私腹を肥やしたわけでもない。前にも書いたように、高待遇の優良企業への就職を蹴って、夢を追い、少ない給料でもヤンキースのインターンとなった。

 2006年にブレーブスに移り、15年10月にGMに就任した。当時36歳、若くて、エネルギーがあって、野心的でもあった。中米の国際選手の契約はドラフトもないし、他チームより多く優れた才能を取り込もうと30球団の獲得合戦はしばしばヒートアップ。ルール違反は、ある意味常態化していた。だがそこでも仁義のようなものがあるのに、彼は行き過ぎ、他球団だけでなく、同球団の人たちにも不評も買ったという。
 
 マンフレッド・コミッショナーはテレビ取材で「どれだけルール遵守に真剣か、メッセージを送る必要がある。とりわけ国際マーケットの違反についてだ。長年にわたって、誤った行為が浸透してしまっている面もあった。ブレーブスは球団として調査に全面的に協力してくれたが、ジョン(コッポレラ)はそうではなかった」とコメントしている。
 
 同じころ、パイレーツで04年から国際スカウト部門を仕切ってきたベテランのレネ・ガヨも解雇された。彼もルール違反を犯しMLBの厳しい調査を受けていた。コッポレラの上司で、MLBのエグゼクティブとして長年、球界で活躍していたジョン・ハートもブレーブスを去っている。MLBはケビン・メイタンなど、コッポレラが契約した13人の国際選手をフリーエージェントとした。

 加えてブレーブスは国際選手の契約年度19〜20年(7月から開始)は契約金で1万ドル以上必要な選手とは契約できず、20〜21年はボーナスプールの金額を半分に削られるなど、さらなる処分を科された。

 12月1日にコミッショナーがオーナー側に通達した言葉は、直前に実例が出たばかりだけに、全球団真剣に受け止めざるをえない状況となっていた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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