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【大学野球】最下位脱出への秘策!先端科学を駆使する東大

 

東大は今秋、15年ぶりの勝ち点を奪取。早大と同率5位で、単独での最下位脱出はならなかった。チームを率いる浜田監督(写真)は来春の目標を、勝ち点2に定めた


 東大が12月23日、東大球場(東京都文京区)で2017年の練習を納めた。今年は150キロ左腕エース・宮台康平(4年・湘南高)が東大史上6人目のプロ入り(日本ハムドラフト7位)。そして、秋のリーグ戦では15年ぶりの勝ち点奪取と話題の多い1年だった。

 12年11月からチームを率いる浜田一志監督は報道陣に囲まれると、自らこう切り出して、笑いを誘った。

「今年だけでなく(リーグワーストの94連敗していた)弱い時期から取り上げていただき、ありがとうございました。正直、来年の戦力は落ちる。見捨てないでください!!」

 自らも教壇に立つ塾経営者という、もう一つの顔を持っており、言葉で人に伝えることに長けている。取材場所となった東大球場のネット裏スタンドでは「2018年のチームづくり」と題した“講義”が始まった。アマチュア球界屈指のアイデアマンは、バイタリティーにあふれている。

 冒頭のとおり、東大は今秋、対法大戦で02年秋の立大戦以来、15年ぶりの勝ち点を挙げた。3勝8敗、勝ち点1は早大と同率最下位も、5位タイと一歩前進した。18年に掲げる目標は「単独最下位脱出」。つまり、そのラインとされる「勝ち点2」を目指していくという。

 しかし、現有戦力を浜田監督が「誰がエース、誰が四番か分からない」と明かすなど、発展途上と認める。東京六大学リーグ戦通算6勝(13敗)のエース・宮台が卒業するばかりか、野手も今秋のベストナイン・楠田創(桐朋高)、田口耕蔵(西大和学園高)、山田大成(桐朋高)のクリーンアップが抜けた。「3人の穴を誰が埋める? ありません。穴のままでいきます」と開き直るが、理系出身らしく、数字を裏付けとしたプランを披露してくれた。

「(今秋の)1試合平均4.1得点は(浜田監督によれば)東大史上一番。来春は2点くらいになる。完封される試合もあるでしょうが、4点以上が3試合の流れは来る。投手は新3年生のカルテット(4人)で回していきますが、うち先発が2人。3点以内が3試合はあるだろう、と。それがいかに、嚙み合うか。ただ、足しても勝ち点2(1カード2勝で計4勝)には届かない。それが正直な分析です」

 机上の計算を上回るための取り組みが始まっている。今年のスローガンは「下剋上」だったが、来年は「一丸」に決まった。浜田監督は「(相手チームのデータを収集する)分析班も今年以上に充実させる。ただ、自分自身の分析もしないといけない」と鼻息が荒い。

 そこで、チームに新たに導入されるのが『スマートブルペン』だ。今年9月、三塁側のフェンス外に同時に3人が投げられる室内練習場が完成。約20あるコンセントを駆使して、ブルペン投球する投手の球筋をリアルタイムで大解剖する。投手のボールの回転数など計測し、制球アップにつなげていきたいという。すでに、打者は昨年から反応を高めることを目的としたVR(バーチャルリアリティー)を取り入れ、先述のように大きな成果を残している。

「東京五輪を前に、大学側が研究に力を入れ始めた」(浜田監督)

 昨年5月に開設された「東京大学スポーツ先端科学研究拠点」が主体となって、野球部が一つのモデルケースとして有効活用していく。

「研究の一環として、ウチの投手を育てる。育成するには、良い環境ができた」(浜田監督)

 MLBを最先端として、NPBの各球団でも「弾道測定器」を導入する球場が年々増えているが、学生野球では画期的な動きと言える。日本の最高学府らしい、頭脳を駆使した取り組みが結実すれば来春にも、1998年春から続く単独最下位脱出も夢ではない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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