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週刊ベースボール60周年記念企画

【週ベ60周年記念企画64】『特集 長嶋茂雄をめぐる噂』【1959年7月1日号】

 

2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

本当だった金田正一がノーサインで投げていた伝説


表紙は国鉄・金田正一


 今回は『1959年7月1日号』。定価30円だ。センターカラーは『ポプラに誓う』。北海道遠征時、ポプラ並木の前でスーツ姿の巨人ナインだ。

 まず、表紙の裏、表2と言われるスペースの広告を紹介しよう。2分の1ずつで上は『ダイヤル119』の見出しで「火事は小さいうちに」と一文があったので、消防局の広告かと思ったが、住友海上火災だった。下は『贈物のホームラン!』とあって「ポケット用ローラーカミソリ」。スウェーデン製で電気、水、石けんの必要なく、肌荒れの心配なく、皮膚のマッサージ効果があり、剃りながら自動的にとげるので、1枚で数十日使えるらしい。本当か!

 巻末グラビアは『生家に帰った山本(八)選手』。前号でキャッチャーへの暴行事件を扱った東映・山本八郎は無期の出場停止処分になっていた。前年5月に審判への暴行事件を犯していただけに、“合わせ技”で厳罰となったらしい。

 本文巻頭は『長嶋茂雄をめぐる噂』。打率4割超えの快調さに陰りが見えた巨人・長嶋の記事だ。スランプの原因については苦手のインロー攻略を意識し過ぎたからと自己分析する。

「イン・ロウの球を打つために、ぼくの左足は大きくステップしてしまい、体が早く開いてしまうのです。そして体が開くと、目と球が離れて、いわゆるヘッド・アップする」(長嶋)

 ただし、打率は6月7日現在でリーグトップの.338。それだけ多くを求められる存在ということでもある。

『宿命の決戦 南海・西鉄戦舞台裏』では、三原脩鶴岡一人両監督の駆け引きと、舞台となった大阪球場の盛り上がりが伝わる。観客がなんとバックスクリーンの前までぎっしり。三原監督からは投手のボールと客の白い服が重なってボールが見えにくいと抗議があったが、「一度入れた客を出すことはできない」となった。このときの監督同士のやり取りもあった。

三原 大阪球場は、お客をつめこめば、それでいいと思っているんですか。

鶴岡 あんたんとこのボロ球場(平和台)だってめいわくをかけとるじゃないか。

三原 いや、かけとらん。

鶴岡 うそいえ、うちの選手がどれほど九州ファンになぐられたかしらんよ。

三原 ファンのやることと、きょうの問題は違う。

 いや、激しい。

 座談会は『キャッチャーマスクの眼〜捕手はつらい…だがそこに喜びが…』。巨人・森昌彦、大毎・谷本稔、国鉄・根来広光が登場。国鉄・金田正一がノーサインで投げていたという伝説があるが、本当だった。

根来 金田さんが投げる場合は、ランナーがいないときなんかは、ほとんどノーサインなんです。だから一応、金田さんのもっているボールの種類を全部頭に入れておかないと。何がくるかわからないでしょう。

 また、この年からスタメンマスクをかぶった森だが、リードが頭脳的という評判はすでにあったようだ。捕手が壁と言われた時代の代表が根来なら、森は捕手新時代の旗手かもしれない。

谷本 インサイド・ワークは森さんの専売特許だ(笑)。

森 それそれ…。ぼくはそれをいわれるのが一番つらいんや。なにもできないぼくに、だれが言い出したかしらんけど、インサイド・ワークなんてことをいいよる。ぼく、なにもしないですよ。第一、インサイド・ワークということ自体がようわからんのですよ。

根来 ぼくら、とるのが精いっぱいで恥ずかしくなるな、そういう言葉を聞くと。

森 それはけっきょく、キャッチャーのカンということだと思うんですよ。たとえば、その試合の先発投手が決まるでしょ。その投手の顏色を見る。ブルペンでボールを受けてみてスピードの状態を知る。それから試合が始まって打者がバッターボックスに立つ。それを見る。そういうのをみんな合わせたカン。そういうことしか言葉で説明できないんですよ。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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