巨人を戦力外となり、現役続行を目指している村田
「『打たれて』やめたいんです」
この時期になると以前、聞いた言葉が脳裏によみがえってくる。2012年オフ、
DeNAから戦力外通告を受けた
清水直行(現
ロッテ一軍投手コーチ)。通算105勝をマークして、2006年の第1回WBCでは世界一の一員となった右腕が現役続行を目指して孤独な自主トレを続けている同年12月、インタビューしたときのことだ。
寒風吹きすさぶグラウンドでの練習を終え、シャワーを浴び、ひと息ついた清水に野球をあきらめない理由を尋ねたら、冒頭の言葉が返ってきた。
左ヒザを痛めて11年9月に手術を受けた清水。その影響もあり、12年は一軍のマウンドに上がることがかなわなかった。
魂を込めて投じたボールが打ち返される。技術的な衰えが、ユニフォームを脱がざるを得ない引き金となっていないだけに無念の思いが強かったのだろう。
自主トレの話題があふれ、
清宮幸太郎(
日本ハム)ら新人の動向も注目されている現在。
村田修一(前巨人)をはじめ、清水のように再びプロ野球界への返り咲きを狙う男は多々いる。
スパッと現役生活に見切りをつけるのも美学なら、ボロボロになってもユニフォームを着ることにしがみつこうとするのも、また美学。しかし、どこか後者のほうに心がひきつけられてしまうのは、なぜか。
野球をあきらめられない男たちに幸あれ――と思う。
文=小林光男 写真=BBM