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背番号物語

【背番号物語】「#29」村田兆治ら華麗に返り咲いた剛腕たちの群像

 

背番号は選手たちの「もうひとつの顔」だ。ある選手が引退しても、またある選手がその「顔」を受け継ぐ。その歴史を週刊ベースボールONLINEで紐解いていこう。

象徴的な“サンデー兆治”



 そのタフさゆえに先発、救援と投げまくる。酷使すれば、故障を免れる可能性は低い。故障すれば、かつての球威を取り戻す可能性も低い。

 ゼロに近い可能性を追い求め、華麗に返り咲いた剛腕たち。そんな「29」を象徴するのが、東京からロッテにかけて最長の23年にわたって背負い続けた“マサカリ投法”の村田兆治だ。タブーだったヒジのじん帯移植手術を受け、2年にもおよぶ懸命なリハビリを経て1985年に完全復活、90年の引退まで先発完投にこだわり、そして投げ抜いた。

【12球団主な歴代背番号「29」】
巨人 三田政夫松田清鹿取義隆前田幸長鍬原拓也☆(2018〜)

阪神 皆川定之辻佳紀江本孟紀井川慶高橋遥人☆(2018〜)

中日 金山次郎鈴木孝政与田剛、前田幸長、山井大介

オリックス 森田定雄岡村浩二河村健一郎石嶺和彦田嶋大樹☆(2018〜)

ソフトバンク 藤戸逸郎杉山光平阪本敏三山本和範(カズ山本)、石川柊太

日本ハム 増本一郎作道烝芝草宇宙八木智哉井口和朋

ロッテ 増山博、吉田英司、村田兆治、小野晋吾西野勇士

DeNA 浅川俊平、加藤俊夫松本豊新沼慎二白崎浩之

西武 塚本悦郎楠城徹杉山賢人三井浩二小石博孝

広島 古葉毅大羽進小林誠二小林幹英、ケムナ・ブラッド誠☆(2018〜)

ヤクルト 石田雅亮芦沢優西村龍次、ブロス、小川泰弘

楽天 矢野英司林恩宇小関翔太山下斐紹☆(2018〜)
(☆は現役)

よみがえる剛腕たち


阪神・井川慶


 ほぼ同時期のセ・リーグで、同様に右ヒジ痛から復活したのが中日の鈴木孝政。剛速球で真っ向勝負、76年にリリーフ中心ながら最優秀防御率にも輝いたクローザーだったが、酷使もあって低迷、投球スタイルを変えることで蘇生して、84年には技巧派の先発として16勝を挙げた。その後継者には剛腕の与田剛、巨人でも背負い続けた技巧派の前田幸長がいて、現在は山井大介が背負う。

 酷使でも壊れなかったのが巨人の鹿取義隆。王貞治監督の必勝パターンを担い、中継ぎ、抑えにフル回転。「酷使される」という意の「鹿取(カト)られる」なる造語も生まれるほどだったが、息の長い活躍を続けた。その系譜をさかのぼると、移籍1年目の別所毅彦や新人19連勝の松田清ら、左右に剛腕がいる。鹿取とともに西武で救援陣“サンフレッチェ”の一矢になった左腕の杉山賢人も「29」だ。

 少数派の打者でも、ほぼ同時期に南海の山本和範(カズ山本)が印象を残している。2度の自由契約から再起を果たし、ハッスルプレーで人気を博した快男児だ。南海は好打者が多い系譜で、阪急の黄金時代を引っ張った阪本敏三が選手最晩年を過ごし、さらにさかのぼれば“円月打法”で59年に首位打者となって初の日本一に貢献した杉山光平がいる。

「27」に次いで捕手の多いナンバーでもある。阪神にはヒゲがトレードマークの辻佳紀がいて、阪急では岡村浩二から継承した石嶺和彦が捕手から外野手に転向、指名打者として活躍した。この2チームの後継者となったのが、メジャーでも「29」を着けた左腕の井川慶。やはり「29」は剛腕たちの背番号だ。

 現役で剛腕の継承者と言えるのはヤクルトの小川泰弘だが、2017年の終盤に右ヒジを疲労骨折、手術を経て18年の完全復活を目指す。剛腕たちのドラマは終わっていない。

写真=BBM
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