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ベースボールゼミナール

【元ロッテ・里崎智也に聞く】中村奨成の良いポイントと今後の課題は?

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者はロッテ2度の日本一、WBC初代世界一に貢献した、元ロッテの里崎智也氏だ。

Q.2017年夏の甲子園で広陵高の中村奨成選手(※その後、広島がドラフト1位指名)が甲子園1大会のホームラン記録を塗り替え、注目を集めました。ただ、大会以前には打撃面より肩の強さとキャッチングがクローズアップされていました。里崎さんから見て、捕手・中村奨成の良いポイントと、プロで課題になる点について教えてください。(東京都・21歳)



A.肩の強さは認めるが、果たして143試合持つか? 課題は山積でキャッチングだけでも時間がかかる。


現在は精力的に自主トレに励む中村


 まず、バッティング面の話をすると、甲子園での活躍は見事でした。金属バットとはいえ、1大会で6本のホームランですから、それだけのポテンシャルを持っているということになります。

 とはいえ、キャッチャーに限らず、高校生がプロに入ると、まず木製バットへの対応に苦しむことになるでしょう。実際、中村選手も甲子園後のU-18ワールドカップでは、それまでの活躍がウソのように凡打を繰り返したと聞きます。加えて、プロのボールと高校生レベルのボールでは、天と地以上の差がありますから、この部分にも対応をしていかなければいけません。

 場合によっては、スタイルを変える必要も出てくることもあるでしょう。これらは慣れて対応していくしかなく、それをいかにスムーズに行なえるか。このあたりが注目ポイントですね。

 ディフェンス面においては、やはり何と言ってもあの肩の強さは魅力的です。スローイングは鍛えればプロ入り後もどんどん良くなっていくものですが、地肩が強いに越したことはありません。ただし、これ以外の部分には苦しむことになると思います。

 中村選手本人はキャッチングに自信を持っているようですが、前述したようにプロのピッチャーは次元の異なるボールを投げてきますから、まともに受けるだけでも最初は苦労するでしょう。しかも、1球団に支配下だけでも30人程度のピッチャーがいるわけで、それぞれが特徴のある球筋を持っています。例えば、同じ右オーバーハンドのスライダーでも、そもそもの軌道が異なり、これを完ぺきに捕球するには時間が必要でしょう。

 加えて、そんな特徴のあるピッチャーたちをリードしていかなければいけません。高校ではせいぜい4〜5人程度のレギュラー組だけを相手にしていればよかったと思いますが、プロではそうはいかない。高卒のキャッチャーがすぐに一軍でバリバリやることが難しいのは、これらのことを考えても分かるはずです。

 ですから、現段階でキャッチャーとしての中村選手を占うのはなかなか難しいです。肩も良いですが、プロは毎日試合があります。高校では全力で投げていたでしょうが、1年間プロでそれが持つのか。ここにも課題があるように感じます。

写真=前島進

●里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ。徳島県出身。鳴門工高から帝京大を経て99年ドラフト2位でロッテ入団。06年第1回WBC代表。14年現役引退。現役生活16年の通算成績は1089試合出場、打率.256、108本塁打、458打点、6盗塁。
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