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ベースボールゼミナール

【元阪神・藪恵壹に聞く】投球数制限は必要?

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.近年、甲子園大会のたびに高校生の“投げ過ぎ”が話題となり、投球数を減らすべきと話題に上ります。メジャーではキャンプなどから厳しく投球数が制限され、アメリカに渡った日本人投手は物足りなさを覚えると聞いたことがありますが、高校、プロを含め、“投球数制限”は本当に必要でしょうか。(東京都・37歳)



A.日本では若年層に投げ過ぎの傾向が強い。投球数の制限はあってしかるべきです。


イラスト=横山英史


 メジャーの考え方から解説しましょう。まず、質問のキャンプのくだりについて。「厳しく投球数が制限され……」とありますが、これは正確ではありません。

 というのも、メジャーのキャンプのピッチャーのメニューは、いくつかの班に分かれて複数のセッション(ピッチング、ベースカバー、ノックなど)を順繰りに回るように決められていて、例えば1つのセッションで20分と決められていたら、時間内にその練習メニューを終えなければいけません。

 つまり、ブルぺンで投げる時間も例えば1班で20分と決められていて、「時間がなくて球数が投げられない」というほうが正しいです。日本のように「200球を2時間かけて投げる」ことは不可能で、いつまでも1人がブルペンに居座ることが許されていないのです。次の班が詰まってしまいますからね。

 私の経験では2分30秒で10球投げられるので、5分で20球。メジャーキャンプではだいたい1人の持ち時間が6分程度しかないので、25球が限度です。日本と比較すると、少ないですよね。それ以上投げたければ、すべてのメニューが終了したあとに、エクストラでブルペン捕手をつかまえて投げるしかない。

 この場合、コーチも見ていないことがほとんど。自分の責任において投げるのですが、見ていないところで投げると、「ケガをされたら困る」(高い給料ですので、当然でしょう)と怒るので、結果的に、“ブルペンでの球数”は少なくなります。

 メジャーでは、「肩、ヒジは消耗品」の考えは根強く、この場合、ブルペンでのピッチングだけが“投げること”とは考えません。バント処理で各塁に投げた送球も1球にカウント。キャッチボールを含め、前述の複数のセッションを回り終えて合計すると、大体100球くらいになり、メジャーではこれが限度となるわけです。

 体の出来上がったメジャー・リーガーでもこれだけケアされているのに、フォームも安定していない日本では若年層に投げ過ぎの傾向が強いですし、投球数の制限はあってしかるべきだと思います。25歳くらいまで骨は成長しますから、早い段階で正しい投げ方を教え、一律で球数制限を設けて成長期に過度なストレスをかけないことが重要でしょう。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。
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