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仮面の告白

【谷繁元信】「ナゴヤドームで勝つ確率が一番高いのは『守り勝つ野球』」/スタジアム論02

 

『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている同氏だが、今回はスタジアムに関して、だ。

ナゴヤドームでは失点は覚悟できない


広いナゴヤドームでは「守り勝つ野球」を実践した2000年代の中日は、黄金期を築いた(写真は06年)


 ナゴヤドームが野球のスタイルを変えたのは事実でしょう。それまでナゴヤ球場でやっていたわけですから、もうまるっきり違う球場ですよ。それに合わせて野球を変えなくちゃいけない。

 ドラゴンズは「守り勝つ野球」を掲げましたが、それが一番、勝つ確率が高い戦い方だったんじゃないですか。ナゴヤドーム元年の97年、星野仙一監督がそれまでと同じような野球をやって最下位。それで翌年から足を使い始めたじゃないですか。あれからドラゴンズの戦い方というのが変わったんですよね。

 守りにしてもベイスターズ時代の横浜スタジアムのときはある程度、失点を覚悟しながらその中でどう点数を抑えていくかに腐心していたんですが、ナゴヤドームの場合は失点というのを覚悟すらできないんです。とにかく抑えて勝つ、守り勝つ。そういう球場ですよね。

 ドームができたことで野球が変わっていくのはいいことなのか否か。僕は、球場によっていろんなカラーの攻め方があっていいと思うんです。作戦一つにしても、例えば横浜スタジアムとナゴヤドームとでは多少違ってくる。

 神宮球場、東京ドームにしてもそうですが、1点というより2、3点、あわよくば大量点を取りにいく攻撃というのも必要になってくると思うんですよね。

 広い球場が多いパ・リーグでは、ソフトバンクを見ても、その広さと真っ向から勝負するかのようなフルスイングがクローズアップされがちかもしれません。でも、日本ハムなどを見ても比較的、守り主体の野球をやっていると思うんです。

 ピッチャー中心で、控えを含めて足のある野手が多いですからね。振り回すのは1人か2人。確かに派手なホームランのほうが注目されやすいですが、本質的には守りの野球をやっていると僕は思っています。

「守り勝つ野球」というのはファンから見ると派手さに欠けてつまらないと映るかもしれませんが、それはそれで野球の醍醐味の一つだと思いますよ。球場の広さによって、本当だったら違う作戦なんだろうけど、この球場だからこういう作戦なんだろうなという部分まで見ていけば、ファンの皆さんは野球の奥深さをさらに味わえるのではないでしょうか。

写真=BBM

●谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)
1970年12月21日生まれ。広島県出身。江の川高から89年ドラフト1位で大洋(現DeNA)入団。2002年FAで中日へ。14年から監督兼任。16年から監督専任も同年8月9日付で退任。現役生活27年の通算成績は3021試合出場、打率.240、229本塁打、1040打点。
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