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ロッテ・鈴木大地が石垣島で見る“景色”

 

2018年、石垣島で鈴木の新たな挑戦が始まっている


 2018年の石垣島で鈴木大地はどんな“景色”を見ることになるのだろう。

 1年前、キャンプインの前日に伊東勤前監督からセカンドへのコンバートを告げられた。かつては遊撃というポジションへのこだわりを口にしていた男は、「ショートへの思いとか迷いはないですね」とすぐに切り替え、新たなポジションに全力で向き合っていった。全体練習で誰よりも泥にまみれ、午後は室内練習場で誰よりも打ち込み、そこから二塁としての基本の動きをひたすら繰り返す。

 キャンプ終盤になっても「僕には二塁としての土台がない。今は二塁の難しさしか感じないんですけど。体の動きも逆になるし、単純に“景色”も違いますし。難しいとは思っていましたけど、ほんと難しいですね……」と正直に現状を吐露していた。だが、そのあとにこう言葉を続けた。「ただ魅力は感じます、セカンドというポジションに。普通に感じるプレーが実はすごく難しいプレーだったりして。奥深さを感じますね」。

 ショートへの未練が本当になかったのかは分からない。ただ、鈴木は無理にでも前を向くことができる。前を向いた上で、新たなチャレンジを本気で楽しむことができる。セカンドというポジションに必死で挑み、全力で楽しんだ先にあったのが2017年シーズン、ショートではつかむことができなかった自身初のゴールデン・グラブ賞獲得だった。

 だが、チームとしては結果がついてこなかった。球団史上ワーストとなる87敗を喫しての最下位。井口資仁新監督をはじめ首脳陣の顔ぶれは一新され、新指揮官が秋のキャンプで真っ先に起こしたアクションが鈴木の三塁への再コンバートだった。

 大胆過ぎるとも思えるゴールデン・グラバーのポジション変更。ただ、井口監督の決断の裏には鈴木に対する大きな信頼があったのではないだろうか。昨季は誰が守っても安定しなかったホットコーナー。そこを固めるには鈴木しかいない。そして、鈴木が去ることで空いた遊撃と二塁を若手たちに競わせ、テーマに掲げるチーム内競争の活性化を加速させる。

「全員がキャプテンのつもりでやってほしい」という思いから指揮官が断行したキャプテン制度の廃止にも同じことが言えるだろう。主将の肩書が外れても、鈴木は「4年間(キャプテンとして)いい経験をさせてもらったけど、やることは変わらない。キャプテンでなくなかったからこそ、どうだったかを問われるのは今年の僕の動き」と口にする。

 肩書がなくなろうが、チームの先頭に立ってけん引する覚悟はできている。鈴木がそんな男だと分かっているからこそ、井口監督は選手たちに自覚をうながすためのカンフル剤として鈴木の胸から「C」マークを外すことに躊躇がなかったのだろう。

「2017年のようなシーズンにはしたくないし、いい思いをしたいというのはある。でも、簡単にはいい思いはできない。僕もコンバートで新しいつらさ、うれしさがあると思うけど、最初は苦しさのほうが多いと思うので」

 ショートからセカンド、そしてサード。2年続けて見る“景色”は変わった。それでも鈴木は新たなポジションで前を向き、“苦しさ”のあとに新たな楽しみと魅力を見出していくはずだ。その先に、チームの浮上という“いい思い”が待っていることを信じて。

文=杉浦多夢 写真=高塩 隆
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