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【大学野球】宮台康平の“後継者”。東大新エースの自覚

 

高いポテンシャル


東大の3年生右腕・宮本は、昨秋まで日本ハム・宮台が着けていた背番号「1」を背負う


 尊敬する先輩からの「金言」を心に秘めている。

「苦しい状況でも、ピッチャーはマウンドで一人。だからこそ、日ごろの練習から強い気持ちで取り組んでいかないといけない」

 昨秋まで東大投手陣をけん引した日本ハム・宮台康平から“後継者”への激励メッセージである。この言葉を受けて、新エースとしてチームを支えていこうと意気込んでいるのが宮本直輝(3年・土浦一高)だ。

 東大・浜田一志監督は絶対的な大黒柱が抜けた2018年の投手陣は「3年生カルテット」に期待を込める。宮本のほか、左腕に小林大雅(横浜翠嵐高)、山下大志(豊田西高)、右腕には濱崎貴介(鶴丸)の計4人が切磋琢磨しながら、激しいチーム内競争を繰り広げている。

 昨秋まで宮台が着けた背番号「1」(湘南高出身の宮台は大学当時、すでにプロで活躍する同級生で同じ神奈川・桐光学園高出身である楽天松井裕樹を意識して選んだ)は、2学年後輩の宮本が背負うことになった。

「昨年11月、新チームがスタートして数週間後、グループLINEで背番号一覧が回ってきたんです。いずれは着けたい気持ちがあったので、『よ〜し!! やってやるぞ!!』という気持ちになりました。もらったからには責任が伴う。精いっぱい、やり遂げたい」(宮本)

 東大・浜田一志監督は「顔が良いのを1番にした(苦笑)」と冗談交じりに語った直後、「勝ち投手になっており、ポテンシャルが高い」と一変、真顔で話し、宮本にエースナンバーを託した理由を語った。

浪人期間が有意義に


 174センチと小柄ながら、投球センスを感じる。指先が器用で、変化球もカーブ、チェンジアップ、シュートをコーナーへ投げ分ける。好きな投手を上原浩治(カブスFA)と語るように、球速表示以上にキレのある最速139キロの真っ直すぐで、空振りを取るのが理想。打者に真っ向から勝負していく姿勢を見せ、チームの士気を上げ、攻撃につなげていくタイプだ。

 谷田部東中時代にはKボールの県選抜チームに選出され、外野手兼控え投手として全国大会4強の実力者だ。茨城県屈指の進学校である土浦一高では1年夏からエースを務めたからことからも、背番号「1」には深い縁がある。高校1年時、東大の現役部員が教育実習へ来た。「漠然と東京六大学へのあこがれはありましたが、より、東大が身近になった」と赤門を目指すきっかけになった。

 1年間の浪人を経て東大合格。実は宮本にとってこの「1年」が、野球人として有意義だったという。高校3年春に右肩を痛め、同夏は無理を押して登板し、県大会2回戦敗退。以降は机に向かい、勉強に専念した約1年半が、痛めた右肩には貴重な休養期間となったのだ。

神宮で残したインパクト


 1年秋に大学デビューを果たすと、2年春にも1試合に登板。そして、昨秋は自己最多7試合に投げ、神宮に強烈なインパクトを残すこととなる。15年ぶりの勝ち点(1カード2勝先勝)をかけた法大2回戦。2回途中からマウンドに上がると、1点差(3対4)に迫られた4回裏、宮本のリーグ戦初打点が左翼席への値千金のソロ本塁打。四番・田口耕蔵(当時4年・西大和学園高)の3ランも飛び出してリードを広げると、宮本は5回まで投げ、6回からは宮台がリリーフして1点差で逃げ切った(8対7)。2002年秋以来(対立大)の勝ち点で、好救援を見せた2番手・宮本が勝利投手(リーグ戦初勝利)となっている。

「野球人生の中でも大きな試合の一つ。いつも支えてくれる応援席もそうですし、4年生と喜びを共有できたのは良かったです」

 同秋は、法大2回戦での3回2/3が最長イニング。実は高校時代に痛めた右肩にまだ不安を抱えており、全力で投げられる球数には、一定の制限があった。この冬場は下半身強化、肩周りの関節強化に励み、右肩に負担のかからないフォームを模索。2月の沖縄キャンプでは投げ込み、実戦が始まる3月以降のオープン戦では「先発完投」を組み込んでいき、4月のリーグ戦開幕には万全のコンディションに合わせていくという。

 昨秋、勝ち点を挙げた東大だったが、早大と並ぶ5位タイと1998年春から続く最下位脱出はできなかった。今春は「勝ち点2」を挙げた上で「単独最下位脱出」を狙っており、宮本は「2、3勝できるように」と、新エースとしての自覚を口にする。

 野球部員が合宿生活する一誠寮では、宮台が3年時に使用した“出世部屋”を、宮本が使用している。高校時代、教育実習で東大が身近な存在になったように、尊敬する先輩が日本ハム入りし、遠い世界にあったプロもより、近くに感じられるようになった。ただ、大学卒業後も野球を続けるかは「具体的なことはまだ決めていない」と、慎重に言葉を選ぶ。

「野球で結果を残したい」

 今春、神宮で東大の背番号「1」が存在感を見せる。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
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