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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

巨人、出場ゼロの男たちの挑戦

 

育成選手としてはただ1人、一軍2次キャンプの沖縄行きを勝ち取った巨人松原聖弥


 狭き門に挑戦する、3人のフレッシュな才能に注目だ。

 2月14日、巨人は1次キャンプを行った宮崎を離れ、翌15日からの2次キャンプに向けて沖縄入り。個人の課題克服に多くの時間を割いた1次キャンプとは異なり、2次キャンプでは14日間の滞在で練習試合、オープン戦含めて計6試合をこなし、戦力の絞り込みが行なわれる。

 そんな実戦でのアピールの場には、投手15人、捕手3人、内野手8人、外野手6人の計32人が参加。ベテラン、中堅の主力どころはもちろん、一軍経験の浅い若手も混じっているのだが、新人、新外国人選手を除き、一軍での公式戦出場経験がゼロの選手が3人いるのをご存知だろうか。

 捕手の田中貴也、外野手の和田恋、そして育成選手ではただ1人、抜擢された外野手の松原聖弥である。

 まず、田中貴。昨季途中に育成から支配下に昇格した守備力に秀でた捕手で、昨季は宇佐見真吾と二軍での出番を競った。打撃に課題があったが、昨秋のキャンプでは実戦3試合で7打数5安打(打率.714)、2本塁打、3打点と“三冠王”に輝き、今春も宮崎での最後の紅白戦で4打数4安打と大当たり。これには高橋由伸監督も「小関(打撃)コーチが実戦派だと言っていましたからね。いいアピールをしている」と絶賛するパフォーマンスで、小林誠司を含めて「白紙状態」と言われる正捕手争いに割って入る勢いだ。

 今季より外野に登録変更となった和田恋は、プロ入り5年目ながらこれまで一軍出場の機会は得られなかった。今春も二軍スタートだったが、途中昇格で持ち前のパワーを披露し、指揮官の目に留まった。チームとしても、思わぬ伏兵の登場は歓迎すべきことで、今度は実戦力をはかりにかけることとなる。

 そして松原だ。プロ1年目だった昨季は二軍でもわずか7試合の出場にとどまっていたが、三軍では打率.332、チームトップの45盗塁を記録してアピールに成功すると、台湾でのウィンター・リーグはイースタン選抜の一員として出場し、19試合でマルチ安打7度を含む打率.311、6打点をマークし、1次宮崎キャンプからの一軍抜擢につなげていた。この宮崎では紅白戦2試合で7打数0安打と結果を残すことは叶わなかったが、そのポテンシャルは高橋監督も認めるところで、「いっぱい学べた」と宮崎キャンプを振り返った松原は、沖縄での結果の“収穫”を誓っている。

 宮崎キャンプを総括した高橋監督は、1次キャンプMVPに岸田行倫(捕手)、若林晃弘(内野手)、田中俊太(内野手)の新人トリオを挙げ、「去年はいなかった選手。戦力の底上げには新しい戦力が必要」とあらためて若手の台頭を期待。これまでとは異なり、実績の有無にかかわらず起用される環境が整っているだけに、開幕のころ、出場ゼロの男たちが先発のラインアップに名を連ねている可能性はゼロではない。彼らの下剋上に期待したい。

文=坂本 匠 写真=榎本郁也
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